Matsumoto Dental University Repository
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TRPV1 の塩基配列と感覚受容の個人差の関連についての研究
松本歯科大学博士(歯学)2015甲第195号application/pdfTRPV1(transient receptor potential cation channel subfamily V member 1) は熱、カプサイシン、酸等によって開く陽イオンチャネルであり、ヒトを含めた多くの哺乳動物では、熱痛覚と辛味はいずれも末梢感覚神経に発現するTRPV1 受容体によって認識される。この分子については、これまでの研究から温度閾値が約43℃であること、カプサイシンの濃度閾値が約0.6 μM であること、さらにその結合部位といった分子特性が明らかにされている。しかしこのような明確な分子特性に反して、日常生活におけるヒトの熱感覚受容および辛味受容の感度には明らかな個人差が存在する。本研究では、熱痛覚受容とカプサイシン受容の個人差とTRPV1分子の関連を解明することを目的とした。被験者30名に対し、熱や辛味に対する自覚症状に関するアンケート、48℃に熱したホットプレートに手を当てて、熱痛覚による逃避までの潜時を測定する熱痛覚感度テスト、濃度0 μg/ml から0.15μg/ml までのカプサイシン溶液を低濃度から順に口に含み、カプサイシン感度閾値を明らかにするカプサイシン感度テストを行った。さらに被験者の口腔粘膜からゲノムを抽出してTRPV1 ゲノム配列を解析し、各テスト結果との相関を調べた。これにより、本人の自覚や嗜好と実際の感度の間には相関がないことが明らかになった。さらに熱痛覚感度は最小2.1秒、最大25 秒、平均7.23 秒±5.52、カプサイシン感度は最小0.05 μg/ml、最大0.15 μg/ml、平均0.088 μg/ml±0.027 とそれぞれ大きな個人差がみられたが、同じ受容体によって伝えられるはず二つの感度の間にも明確な相関はみられなかった。TRPV1 領域約49 kbp の中でもエクソンを中心に合計約12 kbp の配列を調べたゲノム配列解析からは新規のものを含めた多数のSNP が検出され、それらのうちのいくつかは熱痛覚感度との相関がみられたが、カプサイシン感度との相関はみられなかった。本研究からは、熱痛覚感度とカプサイシン感度は独立した認識システムを持つこと及び熱痛覚感度のほうがゲノム配列の影響を受けている可能性が高いことが明らかになった。カプサイシンに対する感覚により強く影響を与えていると思われるゲノム配列非依存性の要因については今後のさらなる研究が必要とされる。doctoral thesi
シリコーンラバー材を用いたスポーツマウスガードの基礎的研究-マイクロ波重合条件の機械的性質について-
松本歯科大学博士(歯学)2015乙第31号application/pdf【目的】スポーツマウスガードにシリコーンラバーを用いるために電子レンジでマイクロ波重合を行い成形加工できることが示されている.本研究の目的は,選別したシリコーン材のマイクロ波重合による機械的性質を評価し,マウスガードに応用するための最も優れた重合条件を検討することである.【材料】シリコーンは厚生労働省告示第595号食品衛生法第10条第1項に準拠した液状シリコーン:ベースX-32-3155/キャタリストCX-32-3155 (信越化学工業社,東京)を用いた.また対象群として市販材料のCapS(エチレン酢酸ビニル共重合体,(株)松風,京都)とMG21(ポリオレフィン, CGK社,広島)を対象群とした.【方法】1. 試験項目は引張試験JIS K6251,引裂強さ試験JIS K6252,硬さ試験JIS K6253,衝撃吸収試験,内部気泡の観察とした.2. 試験片は各試験片原型製作後,FRPフラスコに石膏埋没し,硬化後に除去してモールドにシリコーンを填入・重合して成形した.3. 重合条件は,室温23℃で24時間放置(以下RTとする),出力170Wで10分間重合(以下170w10とする),出力170Wで10分間重合後に700Wで3分間重合(以下170w10+700w3とする),出力170Wで15分間重合(以下170w15とする),出力170Wで15分間重合後に700Wで3分間重合(以下170w15+700w3とする),出力500Wで15分間重合(以下500w15とする)とした.4. 衝撃吸収試験は鷹股作製の鉄球落下試験機を使用した.5. 内部気泡の観察はKODAK Gray CardⓇ(The Tiffen Co, LLC, NY, USA)上に試料を乗せ目視でcm2当たりの気泡数をカウントした.6. 統計学分析は多重比較(Tukey-Kramer法,p<0.05)を行った.【結果】1. シリコーンの引張強さは,マイクロ波の出力が上昇すると増加し,出力時間が長いと増加する傾向を示した.500w15,170w15+700w3が7.8, 8.2Mpaと他の材料より高値になり,MG21と同等の値となった.伸びは,170w10+700w3が349%,170w15+700w3は392%と他の処理方法より大きな値を示したが,市販材より低かった.100%変形時応力は,170w10+700w3と170w15+700w3は他の処理方法・MG21よりも高く,CapSと同等であった.2. 引裂強さ試験ではマイクロ波の出力が増加すると,また出力時間が長いと強さが増加する傾向となり,170w15+700w3は33.7Kgf/cm,500w15は34.2Kgf/cmとMG21より高値となった.3. 硬さ試験ではマイクロ波の出力が増加すると,出力時間が長くなると硬さが増加する傾向となった.500w15は62.6でシリコーンでは最高値となったが,市販材の83.1,83.2より低かった.4. 衝撃吸収試験ではマイクロ波の出力が増加すると,出力時間が長くなると衝撃減衰量が低くなる傾向を示し,170w15+700w3は最も低い0.576KNであった.しかしCapSより高く,MG21と同等であった.5. 内部気泡は500w15が0.67個/cm2で最も多く,他の重合条件の0.24~0.37個/cm2の約2倍であった.また他の条件間には有意差は認めなかった.【結論】シリコーンをスポーツマウスガード材料に用いるためのマイクロ波重合には, 170w15+700w3の重合法が有効であることが示された.doctoral thesi
スポーツマウスガードの新規材料に関する基礎的研究―シリコーンラバーのマイクロ波加硫による物性と結晶石英フィラーの配合―
松本歯科大学博士(歯学)2015甲第181号application/pdf【目的】スポーツマウスガード(以下, MG) は顎顔面口腔領域ならびに頭頸部のスポーツ時の外傷予防を目的として使われ, 材料学的, 生体力学的観点からその有用性が報告されている. 現在MG 材として, EVA 系, ポリオレフィン系などが市販されているが、シリコーンラバーが使われていない. 本研究はシリコーンラバーをMG 材として応用するために, 選定したシリコーンの加硫硬化時間の短縮と物性の強度向上を目的にマイクロ波を応用し, さらに技工操作性を容易にするために充填剤の種類を選択し, 最も有効な配合比率を検討した.【方法】応用可能なシリコーン材として平成24 年食品衛生法厚生労働省告示595 に適合した市販液状シリコーン材(Si l -0 )を選んだ. フィラー配合比率により, Si l - 1 0 , Si l - 1 5 , Si l -20 とした.実験1: Si l - 0 について室温加硫(RV) ならびにマイクロ波加硫(MV) による物性, 適合性, 吸水性を比較調査した.実験2 : Si l - 0 の基剤(ベース) にフィラーを配合した試料と練和物( 練和比1 0 : 1 ) について粘稠度試験行った.実験3 : フィラー配合シリコーンの物性値(RV とMV)と市販MG 材の物性値を比較した.実験4 : Si l - 0 (RV とMV) , Si l - 1 0 (MV) , 市販MG 材による物性試験, 適合試験, 吸水試験を行い比較検討した.臨床応用: 実験1 ~ 4 のデータを基にMG の製作を試みた.結果:実験1:Si l - 0 は硬さ, 引裂き強度共にMV が増加し( p< 0 . 0 5 ) ,硬さは約24%増加, 引裂き強度は約4 0 % 増加した. 衝撃吸収能はMV が約1 . 3%減少したが有意な差はなかった. 適合性はMV がRV に比較し良好であった. また吸水性はRV とMV に有意な差はなかった.実験2 : 粘稠度試験では結晶石英フィラー配合シリコーンが熔融シリカ配合シリコーンよりも低い流動性を示し, 技工操作性に有利と判断した.実験3 : Si l - 1 0 , Si l - 1 5 , Si l -20 の物性値(RV とMV) と市販MG 材の物性値ではMV では配合比率が高くなるにつれ硬さ, 引裂き強度はSi l -10, Si l -15, Si l -20た. 【結論】Si l - 0 の硬さおよび引裂き強度はRV よりもMV で増加し,適合性, 吸水性も良好な結果を示した. Si l -10 はミキシング・カートリッジの使用が可能となった. しかし, 結晶石英フィラー配合シリコーン材のさらなる物性の向上のためには,配合するフィラー粒子径ならびに形状の均一化とシリコーンとの接着強度を高める必要性が示唆された.doctoral thesi
フックによる矯正用ワイヤーの固定機構について
松本歯科大学博士(歯学)2015甲第185号application/pdf現在,歯科矯正治療では主にマルチブラケット装置が用いられている.その治療の中で,歯を移動するために用いるエラスティックゴムやコイルスプリングを矯正用ワイヤーに取り付ける際に様々なフックが用いられている.フックには,ワイヤーを屈曲するタイプ,真鍮線を自在ろう着するタイプ,既製フックをかしめるタイプなどがある.ろう着するタイプとワイヤーを屈曲するタイプは専門的な技術を必要とする.一方,クリンパブルフックは口腔内で装着できる,チェアータイムが短縮できる、専門的な技術を必要としないなどの利点があるが,フックがかしめた場所からずれるという欠点がある.そこで我々は,この既製フックの固定の強化を目的とし,ワイヤーとフックにサンドブラスト処理を行い,ワイヤーとフック間の摩擦抵抗を検討することとした.本研究には,ワイヤーには0.017×0.025inch ステンレススチール(SS)-角形ワイヤー(以下,SS ワイヤー),0.017×0.025inch Nickel Titan(NiTi)-角形ワイヤー(以下,NiTiワイヤー)の2 種類を使用し,既製フックにはクリンパブルフック(以下,フック)を使用した,クリンピングプライヤーは先端形状が三角と四角の2 種類を使用した.ワイヤーにフックをかしめた際の摩擦抵抗の計測では,かしめる力の大きさを一定にする為に,万能試験機の圧縮機能を用いた.また,ワイヤーとフック間の摩擦抵抗の計測には万能試験機の引き抜き機能を用いた.このワイヤーにフックをかしめる摩擦抵抗の実験から、ワイヤーにフックをかしめる力10kgf でワイヤーにフックが接触することが示され、35kgf で摩擦抵抗の増加が終了したことより,本研究では15kgf を摩擦抵抗の計測における弱い力とし,35kgf を強い力とした.ワイヤーにフックをかしめた際のワイヤーの変形の検討では,弱い力15kgf ではほとんど変形が認められず.強い力35kgf では変形が認められた.この結果から,口腔内でワイヤーにフックを装着する際に強い力(35kgf)でかしめるとワイヤーに変形が生じる為,ワイヤーの口腔外における再調整が必要となることが示された.ワイヤーへのサンドブラスト処理はKarasawa らの方法に準じて,処理距離20mm,処理時間5 秒×4 方向,処理気圧0.5MPa,処理方向ワイヤーの長軸方向に対して垂直にサンドブラスト処理を行った.また,フックへのサンドブラスト処理は同条件で処理時間を5 秒1 方向にて行った.表面粗さの計測場所は,ワイヤーはフックと接する面を計測し,フックは,サンドブラストしやすい場所(以下,フックⒶ)とフックがワイヤーに接している場所(以下,フックⒷ)の2 か所を計測した.試験片の表面粗さの計測は共焦点レーザー顕微鏡にて行った.サンドブラスト処理後の表面粗さの検討ではSS ワイヤー,NiTi ワイヤーは共にまんべんなくサンドブラスト処理され,両者共にサンドブラスト未処理に対し,有意に大きな表面粗さを認めた.また,フックではサンドブラスト処理と未処理の間に有意差は認められなかった.これより,矯正臨床においてワイヤーへのサンドブラスト処理は表面粗さの増加に有効であることが示された.サンドブラスト処理の有無によるワイヤー-フック間に発生する摩擦抵抗の比較では,四角のプライヤーで,35kgf でかしめたサンドブラスト未処理のワイヤーとフックの組み合わせに対し,15kgf でかしめたサンドブラスト処理のワイヤーとサンドブラスト未処理のフックの組み合わせとワイヤーとフックにサンドブラスト処理した組み合わせが有意に大きな摩擦抵抗を示した.三角のプライヤーでは同じ条件で同等の摩擦抵抗を示した.以上の結果から,サンドブラスト処理によりワイヤーの表面粗さは変化して,摩擦抵抗が有意に増加し,フックのみのサンドブラスト処理ではフックの表面粗さは変化せず,摩擦抵抗の増加に影響ないことが示された.本研究より,ワイヤーへのサンドブラスト処理により,弱い力(15kgf)でフックをかしめても臨床的に十分な固定が得られることが示された.doctoral thesi
画像解析を用いた再生骨骨質の評価法の開発
松本歯科大学博士(歯学)2015甲第187号application/pdf【背景と目的】インプラント治療においては、歯槽骨量が不足する症例も多く、骨再生治療が頻用されている。しかしながら、再生された骨の性状や経時的変化については十分検討されてこなかった。その理由として、再生骨を評価するための低侵襲で有用な解析手法がないことがあげられる。本研究では、骨再生の新たな評価法として、画像解析技術に着目した。画像処理によってCT画像から骨梁を抽出し、その変化によって骨再生の程度や経時的変化を解析する方法の有用性を検討した。【対象と方法】対象は、東京大学医科学研究所附属病院において、自己骨髄間質細胞を用いた歯槽骨再生臨床研究にエントリーされた15症例中、細胞移植から12か月以上経過した5症例である。骨再生の方法としては、自己の骨髄間質細胞を担体であるβ-TCP顆粒とともに培養を行い、得られた培養骨を上顎洞底部へ移植した。細胞移植後3、6、12か月の時点で撮影されたCTのAxial画像を用いた。解析法はImageJ (NIH)による骨梁構造の抽出と、骨梁構造計測ソフトを用いた定量的解析である。骨梁構造計測ソフトとして、ラトック社のTRI/3D-BONを用いた。ImageJによる解析では、細胞移植後3か月の画像を用いて、既存骨の骨梁は描出されるが、再生骨中の人工骨顆粒は描出されない処理条件を選択した。得られた条件にて再生骨を経時的に観察し、骨梁様構造の再生とインプラント埋入可能な骨質との関係を検討した。次に、TRI/3D-BONでは既存骨と細胞移植後3か月のデータを比較することで、再生骨の特徴を描出することのできる解析項目を抽出した。また、インプラント埋入は全例細胞移植6か月に可能であったため、この時点のパラメーター値をインプラント可能な骨質の評価値として使用することで、インプラント埋入時期の推測に使用できる可能性について検討を行った。【結果】通常のCT画像では、細胞移植3か月の時点においてβ-TCP顆粒様の構造が確認できるものの、再生骨とβ-TCP顆粒とを区別することは困難であった。また、経時的に両者の境界はさらに不明瞭になっていった。ImageJを用いた検討では、術後3か月のCT画像データを用い、骨梁構造を抽出するための画像処理条件について検討を行った。バックグラウンドの補正を行った後に高周波ノイズをフィルタリングにて除去することで、可及的にβ-TCPは除去され、骨梁は維持される条件を設定した。この画像処理条件において細胞移植3、6、12か月後のCT画像を解析したところ、経時的に再生骨の骨梁様構造は増加した。また骨梁の再生は移植部位全体に認められた。しかしながら、細胞移植6か月後のCT画像においてはインプラント埋入部にはまだ骨梁が描出されておらず、骨質とImageJによる骨梁描出との関連は明かではなかった。次にソフトウエアによる骨梁の定量的解析を行った。再生骨に特有のパラメーターを抽出するため、既存骨と細胞移植3か月後の移植部位のデータを比較し、有意差を示す項目を抽出した。抽出された項目(BV/TV、 Fractal dimension、 TBPf)の経時的変化を検討したところ、3か月後から12か月後にかけて徐々に既存骨の平均値に近づいていった。インプラント埋入が可能であった細胞移植6か月後のパラメーター値は、細胞移植6か月後における骨密度の平均値は61%、Fractal dimensionの平均値は2.25、 TBPfの平均値は-0.11(1/mm)であった。【考察と結語】本研究から、CT画像の処理によって人工骨を排除し、骨梁様構造を抽出する再生骨評価法の可能性が示唆された。しかしながら、インプラント埋入が可能であった細胞移植6か月後においてもインプラント埋入部では十分な骨梁が認められない症例が多く、ImageJによる骨梁様構造の描出画像をインプラント埋入時期の判断に使用することは困難と考えられた。一方で、CT画像を骨梁構造計測ソフトにより解析することで、通常のCT画像の読影のみでは得られない骨の定量的な解析が可能であった。インプラント埋入が可能であった細胞移植後6か月時のパラメーター値は、インプラント埋入可能な骨質をCT画像上で評価するパラメーター値と考えられることから、今後さらにデータ数を重ねることで、外科処置の前にインプラント埋入部位の骨質を判定出来る可能性が示唆された。今後はコーンビームCT検査など、より解像度の高い画像を用いることで、評価法としての信頼性が高まるものと考えられた。CT画像や他のエックス線画像における画像解析技術の組み合わせによって低侵襲な再生骨の評価が可能となれば、インプラント治療の予知性を高めるとともに、適切な治療時期の選択によって患者の負担軽減につながることが期待される。doctoral thesi