Bukkyo University
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A Study on Area Committee Members in Tottori Prefecture during War (1937-1945)
本稿の目的は方面委員が深く関わった募金週間の分析を通して,戦時下鳥取県において方面委員がどのように戦時体制に迎合し,その中でいかなる役割が期待されたのかを明らかにすることにある。募金週間は歳末同情週間として始まり,その後方面同情週間,方面強調週間,そして庶民生活強化運動へと変遷していった。その中で方面委員に求められたことは,募金を集めることの他に,一つは天皇制国家の担い手としての役割であり,二つ目は福祉対象者の輔導者としての役割であり,最後に隣保相扶の美風を醸成することであった。こうした中で方面委員は一定の社会的認知度を高めていったが,自律的な福祉従事者集団として認知されたかといえばそうではなかった。その理由は方面委員がその存立根拠を自ら自身の中に求めるのではなく天皇に求めたこと,また客観的な援助論を欠いていたことがあげられる。そして隣保相扶にかかわっても方面委員は独自の地位を占めることができなかったと考えられる。方面委員天皇制輔導者隣保相
Support Issues in Social Care after Leaving a Facility for Children:A Study from the Results of a National Survey
本研究は,2020 年に実施された社会的養護の措置を離れた人を対象とする全国調査結果から,「国・自治体・施設等に『伝えたいこと』」への自由記述内容(544 人が回答)を分析し,本人が「伝えたい」ことは何かを明らかにし,支援のあり方を考察した。定性的コーディングの方法により分析した結果,「伝えたいこと」は,国・自治体・施設等に向けたものにとどまらないことが明らかになった。その全体像は,(1)施設等に「伝えたいこと」(児童相談所,一時保護所,里親(里親委託・里親制度を含む),施設(職員)),(2)国・自治体・社会に「伝えたいこと」(社会的養護に関する支援・制度・環境整備のあり方,子ども・若者への政策・支援のあり方,社会福祉のあり方),(3)私自身の思い・気持ちについて「伝えたいこと」,(4)本アンケート調査について「伝えたいこと」である。社会的養護や,子ども・若者への支援のあり方について「伝えたいこと」からは,措置解除後の支援の改善・充実にとどまらず,入所中から退所に向けた支援の充実,支援体制としての職員へのサポートの充実,偏見・差別を無くすための社会に向けた意見など,子どもの最善の利益を保障するための福祉のあり方を検討するうえで重要な示唆を得ることができた。社会的養護自立支援生活支援伝えたいこと全国調
Visit to Early Childhood Education and Care Facilities in New Zealand:Reflecting on a Trip Featuring “Learning Stories”
本稿では,筆者らが 2023 年 2 月末から 3 月初旬にかけて実施したニュージーランドでの調査について報告する。調査では,ニュージーランドで開発および実践されている保育アセスメント「学びの物語(Learning stories)」が保育現場でどのように受け止められ,実践されているのかを知るために,(1)保育施設の視察,(2)保育者へのインタビュー,(3)保育者研修への参加を行なった。それらを通して感じられたのは,それぞれの子どもの「良いところ」を見つけ,成長の瞬間をお祝いするようなポジティブな評価(アセスメント)観であり,その基盤には,保育者自身が余裕を持って楽しみながら保育することのできる保育文化があるということであった。ニュージーランド保育アセスメント学びの物語(Learning stories)訪問
Hōnen’s Pure Land Thought and the Ojo yoshu
法然が源信の『往生要集』をきっかけとして浄土門に入ったことは、広く知られている。事実、法然撰として四種類の『往生要集』釈書が存在している。しかしこれらの成立順序、また四釈書間の内容の異同については、かねてから議論されてきているものの、未だ確定的な結論を見るには至っていない。そこで本論稿では、先行研究を整理しつつ、まず四釈書中の『往生要集詮要』と『往生要集釈』の詳細な分析を通して四釈書の位置付けを再検討する。その上で、法然が源信の天台浄土教から離れ、独自の浄土思想を構築していく際に課題となった諸点を明らかにする。法然『往生要集詮要』『往生要集釈』観念仏称念
A Study of Labor Disputes in Yamaici-Hayashikumi:Perspectives from Media and Oral History
長野県諏訪郡平野村岡谷は、製糸業の中心地として発展した。1927(昭和 2)年、この地で起きた「山一林組争議」は、戦前の日本における最大の製糸労働者争議であった。本稿はこの「山一林組争議」について、メディア面とオーラルヒストリー面からの捉え直しを試みるものである。争議は女工達の敗北に終わったとされてきた。しかし、従来の研究では取り上げられなかった『岡谷蚕糸博物館紀要』に掲載されている争議に参加した女工の証言からは、何もわからないまま争議に参加してしまった女工達の姿が浮かびあがる。そもそも戦う気のない女工達にとっては、敗北ではないのである。さらに、争議団側に立ち、正しい報道をしたとされる『信濃毎日新聞』についても、その評価についての捉え直しを試みる。山一林組争議製糸女工労働争議信濃毎日新聞女工哀
Distribution Area and Regional Characteristics of Annual Events of Moxibustion: Analysis of Hatsukakyu and Futsukakyu
民俗学において同質的に扱われてきた灸の年中行事について、代表的な二十日灸と二日灸を事例に行事の分布と性質の異同について改めて検討した。二十日灸は東日本に、二日灸は西日本に分布し、東西対立構造を呈することを指摘した。また、二日灸については、二月二日単日実施地域と二月と八月の両日実施地域の間に周圏構造的分布が成立することを明らかにした。行事の性質の比較から二十日灸は、灸による熱刺激よりも煙で燻すことが目的とされ、囲炉裏や自在鉤、敷居や戸口にもすえていることから呪術的要素が強い行事である可能性が示唆された。一方、二日灸は、直接的な施灸行為が主であり、日程的に出替り日との関連が指摘できることから、養生的要素が強い行事である可能性が考えられた。そして、日程や内容の分析から両行事が異質なものであることを明らかにした。年中行事二日灸二十日灸民俗分布東西対立構
雌鳥皇女と女鳥王:記紀のイハノヒメ物語
本稿は前稿(「クロヒメ・クガヒメからみた記紀のイハノヒメ嫉妬物語」『美夫君志』106号、2023・4)をうけ、記紀の比較を通してメドリとハヤブサワケの反乱を考察した。その際『日本書紀』の仁徳条全体を視野に入れ、そこから『古事記』を考えたところに特徴がある。『書紀』を丁寧に読むと、隼別王の反乱の意図が明らかになる中で、仁徳は何度も忍耐し、私事と国家の軽重に悩む。『古事記』には全く描かれない仁徳の寛容・忍耐は、実はイハノヒメの嫉妬物語など仁徳紀全体に及ぶ。さらにそれは、新旧皇后の対照的な描き方とも関係する、いわば『書紀』の基本姿勢なのである。一方、『古事記』は仁徳とイハノヒメに対する反発が、女鳥の積極性とつながり、誅伐に至る。しかし、最後の速総別の二つの歌は、一転二人の喜びを表現する。反逆者の幸福は意外だが、歌による交流によって慰められ和解がもたらされるのは、『古事記』イハノヒメ物語と同じなのだ。一方『書紀』の隼別の歌は、歌による和解や慰めを重視しない態度につながるように思う。これを踏まえ、「後日譚」における大后と皇后の違いを考えてみた
「垂毛亦比肩」考:『懐風藻』下毛野虫麻呂「秋日於長王宅宴新羅客詩」と祥瑞
『懐風藻』所収の下毛野虫麻呂「秋日於長王宅宴新羅客詩」の第三・四句「況乃梯山客 垂毛亦比肩」は、新羅使が瑞獣を伴って来朝したことを表している。「垂毛」は竜馬の肢体を、「比肩」は比肩獣をそれぞれ指している。竜馬も比肩獣も『芸文類聚』瑞祥部に記され瑞獣であり、『延喜式』にも大瑞として掲げられる。瑞祥の知識を持っていた下毛野虫麻呂は、新羅使送別宴での創作にあたり、日本に一千年に一度と言われる七百年続く聖代が出現した奇跡に呼応して、新羅使によって瑞獣がもたらされる奇跡が起こったと観念することによって、天皇と新羅使の双方を讃美することを意図したと考えられる