C-RECS (Creative Repository of Electro-Communications)
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決定木を用いた2段階適応型テストの提案
電気通信大学修士2022適応型テストは,受検者の能力値を逐次的に推定し,その能力値に応じて情報量が最大の項目を出題するComputer Based Testingの出題形式である.その利点として,能力値の推定精度を減少させずに出題項目数や受験時間を短縮できる.適応型テストでは,能力推定の漸近分散がフィッシャー情報量の逆数の値に収束することが知られているため,能力推定値に対してフィッシャー情報量が最大の項目を選択する.しかし,テスト開始直後には能力推定値と真の能力値が乖離しているため,最適でない項目が選択される傾向がある.この問題を解決するためにテスト開始直後の能力推定誤差を考慮した項目選択基準が提案されている.しかし,その項目選択基準の多くは,計算に数値積分が必要であるため,極めて計算コストが高く実用化が困難とされている.この問題を解決するために,受検者の全回答パターンに対して決定木を事前に構築し,その決定木を用いて項目を選択する手法が提案されている.しかし,この手法は,出題項目数の増加に伴い,決定木の分枝数が指数的に増加することから,構成可能な決定木の大きさが限定されてしまう問題がある.この問題を解決するために,本論文では,決定木を用いた2段階適応型テストを提案する.本手法は,事前に予測効率の高い項目選択基準を用いて構成可能な最大サイズの決定木を構築する.テスト時は,テスト前半に決定木に基づき項目選択し,受検者の能力値が収束し始めるテスト後半にフィッシャー情報量が最大の項目を選択する.第1段階では,極めて計算コストが高い項目選択基準を用いることによって能力推定誤差の影響を小さくできると期待できる.第2段階では,能力推定値は真の能力値に接近しているため,フィッシャー情報量を用いて項目選択することで高い能力推定精度が期待できる.本論では,シミュレーション実験と実データを用いた実験により決定木を用いた2段階適応型テストの有効性を示す.thesi
エンタングルメント純粋化と蒸留プロトコルに関する情報スペクトル的研究
電気通信大学修士2022Shannonによって提唱された情報理論は,古典系と量子系その両方の観点から様々な研究者によって研究されてきた.現在では,実験技術やデバイスの向上によりコンピュータ素子においても量子的な効果を考慮しなければならない段階となり,量子系を扱う量子情報理論の重要性はさらに増している.中でも,最大エンタングル状態は量子的な相関を持つ状態であり,量子的なプロトコルにおいて重要である.また,量子通信において二者間でエンタングルメントを共有する技術は量子暗号や量子中継などの分野でも重要となる.
本研究で扱うエンタングルメント純粋化は LOCC 変換 (Local Operation and Classical Communication) によって,与えられた初期状態から最大エンタングル状態を生成するプロトコルである.LOCC 変換で共有できるエンタングルメントの最大値をエンタングルメント純粋化容量という.与えられた初期状態にi.i.d.性(independent and identically distributed)を仮定した際のエンタングルメント純粋化容量はDevetak, Winterによって与えられている.
そこで,本研究では情報スペクトル的方法を用いてi.i.d.性などの確率構造を仮定しない場合のエンタングルメント純粋化容量を研究した.情報スペクトル的方法を用いたエンタングルメント純粋化は初期状態を純粋状態に制限したものがJiao-Wakakuwa-Ogawaによって与えられている.本研究ではこれを拡張した混合状態のエンタングルメント純粋化プロトコルについて情報スペクトル的方法を用いて研究し,エンタングルメント純粋化容量の一般公式を導出した.
一般公式の証明は順定理と逆定理から成る.さらに順定理では二つのステップに分けられる.まず,二体系AB間の混合状態が与えられたとき外界系Eを含めた純粋化を考える.これを漸近LOCC変換によってA-BE間の最大エンタングル状態に変換する.次に,生成したABE間の最大エンタングル状態を仮想的に外界系Eを盗聴者とした盗聴通信路とみなすことで,盗聴通信路符号化とDevetak-Winter論法に基づいてレートの評価を行った.
逆定理では,エンタングルメント純粋化でLOCC変換の局所操作を量子古典操作に限定した鍵共有プロトコルに帰着させた.このとき,鍵共有プロトコルについて相互情報量スペクトルを用いた上界を求め,これがエンタングルメント純粋化レートの上界となっていることを示した.thesi
note series : Summary of "What Kind of Exam Questions on Informatics Will Appear in University Entrance Exams?"
2023年度から実施されている新学習指導要領で学んだ生徒が受験する2025年以降の大学入学共通テストでは「情報」が出題される.どのような試験問題が想定されるのか,また,どのように指導すればよいのかという高校現場からの声に呼応すべく,本会情報入試委員会では,noteの連載記事として,教科「情報」の入試問題を解説している.2023年2月末までに掲載された問題を整理し,インデックスとして活用できるよう,本稿をまとめた.journal articl
泥棒の速度が異なるCop and Robbersの格子状における戦略
電気通信大学修士2022Cops and Robbersとはグラフ上で行われる鬼ごっこのようなゲームである。プレイヤーは警官プレイヤーと泥棒プレイヤーに分かれる。それぞれのプレイヤーは警官と泥棒をグラフ上で移動させ、警官は泥棒を追いかけて捕まえること、泥棒は警官から逃げることが目的である。このゲームについて多くの研究が行われている。警官が勝利するグラフの性質の解析や、グラフ上で強盗を捕まえることができる警官の最小数を求めることのNP困難性、また、ケイリーグラフ、木構造をもつグラフ2つの直積を取ったグラフなどの様々なグラフ上での研究が行われている。さらに、ルールの様々な変種が提案され、研究が行われている。例えば、泥棒が警官より早く移動できるルールや警官が今いる頂点に留まれないルール、泥棒が警官を攻撃して、警官を取り除くことができるルールなどが挙げられる。
本研究では、泥棒のみ1回の手番で、2頂点分移動できるというルールを考える。そのうえで、警官のみ泥棒の位置する頂点を認識できず、その代わりに、泥棒の位置する頂点への最短経路に含まれて、かつ警官の位置する頂点と隣接している頂点を認識できる、という変種ルールに変更した場合と警官が泥棒の頂点を認識できるという通常ルールの2通りのルールで三角格子と正方格子上における警官と泥棒の各々の戦略を提案する。泥棒の速度が2で、警官の認識条件が通常のルールにおいてn=10の正方格子上で警官2人の場合の泥棒が必勝であることを示した。泥棒の速度が2で、警官は方向のみ認識できるルールにおいて、n≤4の三角格子と正方格子上での警官2人で警官の必勝である事を示した。また、泥棒の速度が2で、警官の認識条件が通常のルールと警官が方向のみ認識できるルールにおいて、n-正方格子上で[(n+1)/2]+1人の警官が存在する場合、警官の必勝であることを示した。thesi
複数タイトルに利用できるゲームBOT
電気通信大学修士2022本研究の目的は、ゲームBOTの対象を単一のゲームタイトルから複数へと拡張する手法の検討である。ゲーム性は同じだが外見特徴が違うことで重みを共有出来ない問題に対応出来るような枠組みを目指す。対象の拡張によってBOTの必要数を減らすことで作成にかかる負担を軽減することが狙いである。
そこで本研究ではメタモジュールと固有モジュールを持つメタ行動調整モデルを提案する。各モジュールはニューラルネットワークによって構成され、DDQNによって学習する。ゲームの構成要素を類似した複数の環境に共通する要素とゲーム固有の要素に大別し、各モジュールの入力とする。メタモジュールは共通する要素を入力として基本的な行動を出力し、固有モジュールはゲーム固有の要素を入力として各タイトルに適した行動を出力する。メタモジュールで獲得する知識はメタ学習に相当する抽象的な行動となる。また、画面をグリッド状に分割して再構成することで各要素の細かな位置の違いを許容する。メタモジュールの知識を複数環境に利用することで個別学習と比較して学習コストを軽減する。
画面の記号化を行うため画面上オブジェクトの検出をAtari2600を対象に実験した。検出手法にはYOLOとテンプレートマッチングを用いた。YOLOにおける検出は50枚の学習画像で平均78%であった。
記号化モデルについてMiniGrid環境とAtari2600のAssault,DemonAttackで実験を行った。MiniGrid環境の実験では30000エピソードでメタモジュールのみで0.5、固有モジュールも活用して0.8のスコアとなった。Atari2600環境ではスクラッチからの学習で1000エピソードのスコアをメタモジュールに学習済みの重みを利用することで100エピソードで到達した。メタモジュールに利用する重みを別タイトルで学習した場合でも同程度の性能となった。
結論として記号化ネットワークにおける固有モジュールを含む階層的な構造が学習に有効であることを示した。メタモジュールの知識は別環境で学習したものであっても有効に働いた。MiniGrid環境で行った考慮すべき特徴の明示的な複数入力についても学習の促進につながる可能性がある。要素情報を保持していれば外見はゲームプレイに影響せず、詳細な位置情報でなくても学習可能であることを示した。記号化モデルによって類似した複数の対象に共通する基本行動を獲得できた。thesi
Rb原子のRydberg状態への二光子励起用レーザーの周波数安定化
電気通信大学修士2022光マイクロトラップアレー中のリュードベリ状態の原子を用いた量子シミュレーターは、量子もつれ状態にある量子多体系の物理的な性質を調べる方法として注目されている。我々は、レーザー冷却Rb原子を用いてこのような量子シミュレーターを開発し、10個以下の量子スピン系のコヒーレントなダイナミックスのシミュレーションを実現した[1]。
今後、原子数を10個以上に増やして本格的な量子シミュレーションを行うためには、コヒーレントな相互作用時間を現在の数μsから10μs以上に長くする必要がある。その方法の一つとして、リュードベリ状態への二光子吸収遷移の中間準位を現在の5P_(3/2)から励起寿命の長い6P_(3/2)に変更することが挙げられる。この方法によりコヒーレンス時間を延長することができ、200個以上の原子を用いて量子シミュレーションを行ったという報告もされている[2]。
このため同様の方法を用いてリュードベリ状態に励起するため、波長420nmおよび波長1013nmの周波数安定化レーザーの開発を行った。2つのレーザーは共に干渉フィルターを用いた外部共振器型半導体レーザーからなり、これをフィネス1000以上の基準光共振器にそれぞれ周波数安定化を行う。さらにRb原子の5S-6P遷移の飽和吸収線を基準として共振器長を安定化することにより、1013nmの絶対周波数を安定化する。量子シミュレーションを行うためには、レーザーの周波数は長期安定度と短期安定度の両方が高いことが必要となり、これを実現するためトランスファー共振器と変調移行分光法による安定化を行った。これまでに波長420nmレーザーは、100秒で5kHz{7×10^(−12)}程度の周波数安定度を実現しており、波長1013nmレーザーも同様の安定度が期待される。今回波長420nmレーザーは2.2kHz、トランスファー共振器の共振器長は458kHz程度の安定度となった。また波長1013nmレーザーの安定化を行うため誤差信号の観測を行った。今回は、開発した2つのレーザーについて得られた周波数安定度を報告する。thesi
人間を超える将棋AIの出現がプロ棋士の棋譜に与える定量的変化の分析
電気通信大学修士2022現在,将棋AIはプロ棋士をはるかに凌駕するレベルにある.それに伴って,近年ではプロ棋士が将棋AIを用いた将棋研究を行うことが普通になってきた.こうした背景から,将棋AIが近年のプロ棋士の棋譜に大きな影響を与えていると言われているが,実際にどのような影響が生じているのかについて,定量的分析を行った研究はまだ少ない.
そこで,本研究では将棋AIを用いて近年のプロ棋士の棋譜に現れる変化を定量的に分析した.具体的には,将棋AIが示す手との一致率と一手指すごとにAIから見てどの程度評価値を下げているかを示す平均損失を指標に棋譜の分析を行った.その結果,1985年度以降の順位戦の棋譜においては,人間を超える将棋AIの出現に関わらず,年代が進むごとにAIとの一致率については向上が見られた.詳細に調べると,プロ棋士が将棋AIを将棋研究に利用し始めたと思われる2017年前後から序盤の局面において顕著に一致率も平均損失も大きくなっていることが判明し,将棋AIがプロ棋士の棋譜に影響を与えている可能性が示唆された.また,棋力に関係する指標である中盤の拮抗した局面における平均損失については,将棋AIの出現に関わらず変化していないことも明らかになった.また,プロ棋士全体の順位戦の棋譜とレーティング上位のプロ棋士の全試合の棋譜を用いた定量的分析から,棋力が高ければ高いほど,一致率も平均損失も高くなることが示された.藤井聡太氏の中盤の拮抗した局面における平均損失は、トッププレイヤーの中でも突出した値を示すことがわかり,本指標が強さを表す指標として優れていることが再確認された.thesi