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「待機状態の生活」─スペインにおける「同伴者のいない未成年移民」の生活の質に非正規滞在と正規性の追求が及ぼす影響─
要旨
本稿はスペインの事例を用いて、同伴者のいない未成年移民(Unaccompagnied Minors:UAM)の非正規滞在と、かれらの生活の質との相互関係について論じる。具体的には、リェイダ県(カタルーニャ州)のサン・ジュアン・ダ・デウ・テラス・ダ・リェイダ移民収容施設で行った質的調査(UAM と12 回、スペイン人および未成年移民との2 回のフォーカスグループ・インタビュー、社会教育者や心理学者といった主要な関係者との9回の詳細なインタビュー)にもとづき、未成年移民の法的地位と社会的状況が、かれらの将来への期待と受け入れ社会への統合にどのように直接の影響を及ぼすかを分析した。かれらは、正規滞在に向けた過程として収容施設に滞在する過程で、希望や夢が無期限に先延ばしにされる「待機状態」の生活を送る。そのことが、スペイン人の同世代の若者との間の亀裂を生み、結果的に、より良い生活を求めて移住したはずの未成年移民の生活の質に、短期的にも長期的にも悪影響を及ぼしていることが明らかになった。
訳者解題
本稿と著者の概要
本稿は、ルーマニアの「生活の質研究所(Institutul de Cercetare a Calității Vieții,ICCV)」が刊行する学術誌『生活の質(Calitatea Vieții)』に掲載された論文[Sajir,Zakaria., Rafael-Ruiz, Andrés., and Molinero-Gerbeau, Yoan. 2022. “A Life on Standby”:The Effects of Irregular Status and the Pursuit of Regularity on the Quality of Life of Unaccompanied Minors in Spain. Calitatea Vieții, 33(2), 126-146. https://doi.org/10.46841/RCV.2022.02.04]の日本語訳である(日本語タイトルは訳者による)。
本稿の著者3 名のうち、ザカリア・サジール氏とヨアン・モリネロ・ジェルボー氏の研究に関しては、以前に訳者(上野)が日本語訳した2つの論文の訳者解説を参照されたい(Molinero-Gerbeau 2019=2023; Sajir, Molinero-Gerbeau and Avallone 2022=2024)。ラファエル・ルイス・アンドレス氏は、マドリード・コンプルテンセ大学宗教科学研究所の研究員で、20 世紀後半以降のスペイン社会における世俗化のあり方などについての歴史社会学的研究を展開するとともに、宗教間対話に関する複数の研究プロジェクトに加わってきた。本稿のほかにも、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック下にスペインのインターネット空間で広がった、イスラム教嫌悪と結びついたデマを質的に分析し、17 類型に整理した論考を、ザカリア・サジール氏とともに発表している(Andrés and Sajir 2023、スペインにおけるコロナ禍と移住者に関して、上野 2020a; Sajir et al. 2022=2024も参照)。
南欧社会と「同伴者のいない未成年移民」
本稿が注目するのは、とりわけ20 世紀末以降、紛争や暴力、貧困などを逃れて移動する人々のなかでも特に脆弱な立場に置かれた存在として世界的に注目されるようになった、保護者や家族を伴わない移住者としての、「同伴者のいない未成年移民(Unaccompagnied Minors: UAM)」である。それまで未成年者は、独自の意思で自発的に国境を越えることの難しい「移動性の落伍者」とみなされがちであり、出生国から脱出する例外的な手段としての国際養子縁組制度にかんする研究や政策論議の蓄積とは対照的に、(グローバル・サウスの難民キャンプには多くの単身未成年者がいるにもかかわらず)かれらの単身越境は等閑に付されてきた(cf. 柄谷 2016: 第4 章)。ところが1990 年代以降、子どもの権利条約の国連採択(1989 年)と締結国の増加を一つの契機に、子どもの基本的人権を国際的に保障する機運が高まった。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が1993 年に定めた子どもの難民に関する行動指針(EC/SCP/82)においても、難民のなかでも、とりわけ同伴者のいない未成年者に特別の保護とケアを提供する必要があることが強調されている。また同時期には、冷戦体制の崩壊を背景とするユーゴスラヴィアやアルバニアにおける混乱のなか、単身でイタリアやギリシャなどを目指す未成年移民の存在が顕在化した。かれらは極めて脆弱な立場に置かれるなかで、組織犯罪に巻き込まれ、またそれに加担するリスクを抱える可能性が他の移住者より高いとされるだけでなく、主流社会がかれらを「犯罪者」としてスティグマ化することが更なる排除につながり、生活と法的地位の安定化がより困難になる悪循環に陥る場合が多い(Plan 2023 のほか、ギリシャの事例に関してPapadopoulos 2023 を参照)。訳者(上野)のバルセロナ郊外における調査においても、脆弱な立場に置かれた移住者を対象とする社会教育が、1990 年代に本格化したUAM への支援を通じて制度化したことが明らかになっている(上野 2020b: 72)。
UAM の存在は1990 年代から局地的には知られてきたが、地中海国境の管理厳格化がすすんだ2000 年代、逆説的にも、よりよい生活を求めて出生国から欧州をめざすUAMの数が増加した。そのなかで、「優先的な庇護対象」となる未成年者でありながら、「望まれない移民」にも位置付けられがちなかれらをめぐる社会的な葛藤が表面化するようになった。特に2010 年代以降、スペインのみならずイタリアやフランスでも、UAM の処遇が移民政策をめぐる一大争点となるのみならず(芦田 2024; 奈良 2024)、ルイ= ジュリアン・プティ監督『ウィ、シェフ!』やダルデンヌ兄弟監督『トリとロキタ』(ともに2022年公開)のような映画作品の題材にも取り上げられるようになってきた。スペインに関していえば、前近代からの歴史的記憶や近代の植民地戦争などの複合要因を通じて形成されてきた、イスラム教徒やアフリカ出身者、とりわけ「モロッコ人」に対する排外主義的な言説を、2010 年代に入ってから伸長してきた極右政治勢力が利用するなかで(cf. 池北2019)、かれらと深く関連したネガティブな象徴的存在としてのUAM が最大の攻撃対象とされ、そうした状況はコロナ禍において深刻化した。なお、地中海国境としばしば比較される米墨国境においても、エルサルバドルなど中米諸国から米国を目指す未成年単身移民の数が2010 年代以降に増加し、またそのことが移民・国境政策をめぐる米国内の論争のなかで政治化されている(Galli 2023)。
グローバルな課題のひとつとなったUAM 受け入れに関して、スペインの国家と地方政府の事例は一方において、UAM を主対象とする移民法改正を実施するなど、新たな包摂のモデルを積極的に模索している点で興味深い。スペインの事例は他方で、UAM に対する包摂と排除のあり方を構造的に規定する、スペイン国民国家の形成に関わる歴史的諸問題や、欧州統合の矛盾をも浮き彫りにする。例えば、多くのUAM の移住経験と関係する、アフリカ大陸に保有する飛び地(セウタとメリリャ)を含む地中海沿岸地域における国境管理のポリティクスが必然的に生み出す移住・滞在の非正規性(cf. 石灘 2022; 2024)は、スペインの欧州統合過程への合流と、シェンゲン条約に象徴される欧州域内自由移動の確立の複雑な連関が生み出してきたものである(小井土 2017; Abril and Spottorno2017=2019)。また、各自治州間での未成年者保護に関する政策枠組みの不一致も、欧州共通通貨であるユーロの導入に向けた財政規律化や地域(リージョン)主体の経済進行政策と連動しつつ、中道右派アスナール政権下で始まった1990 年代後半からの分権改革とともに顕在化した現象である(永田 2016; 2019)。
こうしたアンビバレントな状況下で、非正規移民としてのUAM にとって、正規化は依然として大きなハードルでありつづける。その困難がもたらす「待機状態の生活」が、同年代の若者との比較のなかでの相対的剥奪を深刻化しうることを事例研究を通じて示唆した点は、本論の大きな成果であるといえる。
本稿の成果と課題──送り出し国モロッコの視点から
上述のように、スペインをはじめとする南欧諸国において最も論争的なテーマのひとつとなったUAM の受け入れについて、事例研究にもとづくミクロレベルから問題提起を行う本稿には高い参照価値が認められる。それでもあえて本稿の限界を指摘するならば、UAM を送り出す、地中海の南側に位置する地域における若者を取り巻く状況についての考察が不足している点が挙げられる。そこでここでは、スペインにおけるUAM の受け入れ問題と不可分な、モロッコをめぐる状況について補足する。
本稿で論じられているスペインのUAM は、中東・北アフリカやサハラ以南アフリカ諸国など多様性があるものの、国籍として最も多いのはモロッコである。モロッコは歴史的に、旧宗主国であるフランスやスペインを中心に正規/非正規に移民を送り出していたが、1990 年代にモロッコ人UAM の問題が顕在化した(Khachani 2010)。この背景として挙げられるのは、スペインと近接しているという地理的要因はもちろんのこと、貧しい家庭環境やそれに伴う就学率の低さなど、モロッコにおける地域間格差や社会階級の差といった社会的要因であった(Lahrech 2022)。
スペインは2018 年に、UAM の入国数の大幅な増加を経験する。本稿の調査が行われたカタルーニャ州でも、同年のUAM の入国数の8 割近くをモロッコ人が占めていた。2018 年は、前年にリビア・イタリア間で非正規移民に関する合意が締結されたことを受け、モロッコ・スペインを経由する地中海西ルートでの人の移動が増加した年でもある。モロッコでは、ヒラク・リーフ運動に対する政治的弾圧(政治の腐敗や独裁に対してデモを行っていた指導者が逮捕され、20 年の実刑判決が言い渡された)が起こった2017 年ごろを境に、若者を含むモロッコ人が泳いでスペインの飛び地を目指そうとする試みが増加した。こうした若者のなかには、未成年者も含まれている(Lemaizi 2019; AssociationMarocaine des Droits Humains 2023)。
モロッコでは、幼いころから移住を検討する子どもがいる傾向がある(Khachani 2010)。経済的理由や教育機会といった動機のもと多くのモロッコ人が「たとえ必要な書類を持っていなくても」移住することを検討しているなか(Arab Barometer 2024)、未成年者の移民数も増加している。スペインにおけるUAM の受入数は、あくまで越境それ自体に「成功」した未成年者の人数であり、その過程で命を落としたり、行方不明になったりした子どもも少なくない。
UAM の移住に関して特徴的なのが、SNS の影響である。動画共有アプリのTikTok などのSNS では、越境の過程やスペインでの生活など、すでにスペインに渡ったモロッコ人の「成功」が動画で共有されている。SNS で可視化された「成功」はほかの子どもにとってのプル要因にもなり、こうした「成功」を夢見て、自ら移住を志向しUAM となる子どももいる(Zoubeidi 2023; El Kanabi 2024)。また、スペインにおいて未成年者に対する配慮があり、正規化の道も開かれていることが、子どもに移住を志向させる要因となっているとの指摘もある(Khettou 2024)。本稿で指摘されているように、モロッコを出発するUAM は、社会・経済的な停滞や政治的な問題を抱える自国を離れ、正規化の可能性もあるスペインで、より良い生活を送るという希望を抱いているのである。
欧州における移民受け入れの「危機」をめぐる言説は日本においても頻繁に紹介されているが、本稿のような実証研究の成果や、ここで補足したような広域的かつ越境的な諸要因は考慮されていない場合がほとんどである。これらを踏まえた、人の移動や人権保障に関連したグローバル・イシューの、より精緻な分析が求められているといえる。departmental bulletin pape
中学校図形領域の学習における批判的思考の様相─星形図形に関する生徒の学びの様子から─
要約
本研究の目的は、中学校図形領域の学習における生徒の批判的思考の様相を捉え、その役割を示すことである。批判的思考を「適切な結論を得るために何らかの判断をする際、自分の推論過程を吟味する思考」と規定し、具体的な様相として「目的は何かを常に意識すること」「自他の思考傾向が違うことを前提とすること」「ものごとを鵜呑みにせず、慎重に検討すること」「理にかなった方法で考えること」「疑問が尽きるまで問い続けること」が表出するものと整理した上で、中学校2 学年において星形図形に関する授業を行い、生徒の学びの様子を枠組みに沿って整理し、批判的思考の様相を捉えることを試みた。授業では、5.5角形はどのような図形かを探究する場面を提示し、生徒がその解明に取り組んだ。その結果、生徒同士の議論や教師による刺激が批判的思考を誘発し、数学の深く豊かな学びを生み出す可能性があることを指摘した。departmental bulletin pape
教師の指導力向上を目指した専門家による継続した授業支援の効果 ─「身体の体験の共有」を重視した授業支援を通して─
本研究では、肢体不自由者を教育する特別支援学校において、専門家による継続した「身体の体験の共有」を重視した授業支援が教師の指導力向上にどのような効果があるか検討された。対象は、児童1 名とその担任教師(以下担任とする)である。この授業支援は、主に自立活動における身体の動きに関する指導について、1 回目は個別の指導計画を元に児童の課題、指導目標、内容、方法について担任と確認を行い、その後は毎月1 回、担任とともに授業の中で児童にかかわりながら行われた。授業中は、具体的な助言を行ったり、実際の指導を見せたりする中で、特に重視したことは、児童に伝えたい身体の動きを担任に体験してもらうことで、まずは筆者と担任が「身体の体験の共有」をすることであった。その上で、身体の動きに関して担任自らが身体で体験したことを児童に伝え、その体験を担任と児童が共有することで、実感を伴ったかかわりにしようとした。授業中における支援は計7 回行われ、授業ごとに児童の身体の動きの変化に対する担任が発した言葉(気づき・疑問点等)と児童の身体に関する変化や筆者からの助言等の記録及び支援期間の始めと終了時に実施した指導に関する質問紙による自己評価の変化による分析を行った。その結果、授業ごとの記録では回を重ねるごとに児童の変化への気づきや動きのフィードバックの感想が増えていった。質問紙の回答では、「身体の動きに関する知識・技能」「個別の指導計画の作成と評価」「指導に対する自信」「他の学習場面への応用」の項目に顕著な向上が見られた。このような結果から、専門家による継続した「身体の体験の共有」を重視した授業支援は、教師の指導力向上に効果があることが示された。departmental bulletin pape
沖永良部島の農業構造─地域差と特有性─
摘 要:
日本農業が全体として縮小傾向を辿ってきた中で、食料・農産物の生産・流通過程を革新して供給を継続し、農村を維持して環境にも配慮してきた地域がある。本研究では、「高生産性農業」と「農業先進地域」として注目されてきた鹿児島県沖永良部島(和泊町、知名町)の実情について、奄美群島における農業構造の地域差と同島の特有性に着目して明らかにした。
沖永良部島の農業構造の特徴は、1980 年代までに生産3 要素の土地、資本、労働力に明確に表れており、これらが変化しつつも「農業先進地域」の一端をとくに和泊町で確認することができた。一方、作目選択と農業生産性に表れた島の特有性は、土地の活用と設備への投資と島民の労働によって培われてきたが、1990 年代から2000 年代にかけて希薄化する傾向も見られた。これは同島が「ユリの島」から「花の島」へ、そして「農業の島」へとシフトしつつあることを示している。
沖永良部島の「高生産性農業」は、生産3 要素において和泊町での拡大化とともに知名町での効率化という地域差もともなってきた。土地生産性は相対的に高く推移し、労働生産性は奄美群島の中では高かったが、県平均や全国平均よりも低くなってきた。これらの点は、和泊町でおこなわれてきた経営規模の拡大や資本と労働力の投下が必ずしも十分な費用対効果を生み出してこなかった可能性を示している。一方、知名町では相対的に高い費用対効果を獲得し、資本と労働力の投下を抑制してきたと考えることができる。こうした農業構造の地域差と特有性が島内で平衡を保ってきたことに社会的・経済的な意義があったと推察される。departmental bulletin pape
国際バカロレア「16+プログラム」の概況とその日本語DPへの影響に関する考察
抄録
This paper examines the revision of the International Baccalaureate’s (IB) 16+ Programme and its potential impact on the Japanese Dual-Language Diploma Programme (Japanese DP). IB continues to evolve globally, and this is evidenced through ongoing developments of new transdisciplinary subjects including “Language and Culture” and “Systems Transformation: Leadership for Change.” These subjects reflect IB’s shift towards interdisciplinary and real-world learning. However, implementing these new courses in Japanese DP schools presents challenges, such as the need for qualified teachers to deliver content in English or the adaptation of these curricula into Japanese. The paper examines the potential of these new subjects to enrich the IB curriculum while addressing the logistical barriers to their introduction in Japan.departmental bulletin pape
技術科「情報の技術」と情報科「情報Ⅱ」における知識に関わる連携接続の一検討─検定済教科書から抽出した重要語句の共通性─
要旨
本研究は、中等教育段階における情報教育の連携接続の一軸と考えられる中学校技術・家庭科技術分野「情報の技術」と高等学校共通教科情報の「情報Ⅱ」において、知識に関わる重要語句の共通性を検討した。それぞれの検定済教科書の太字・索引から語句を抽出し、共通に記載されていた検定済教科書数をもとに、重要語句を設定し、「情報の技術」と「情報Ⅱ」で共通の重要語句を整理することを試みた。
共通に記載されている検定済教科書数2 と3 を重要語句とした結果、「情報の技術」では69 種類、「情報Ⅱ」では197 種類が、重要語句として設定された。その中で、共通した重要語句は、20 種類が整理された。この重要語句を、検定済教科書の記載ページを再確認し、 それぞれの学習指導要領で示されている学習項目に分類した。その結果、「情報の技術」(1)と「情報Ⅱ」(1)の学習項目間で、9 種類の重要語句が共通しており、この学習項目間においては、重要語句を基にした知識面での連携接続が一定範囲で可能であると考えられた。しかし、その他の学習項目間では、共通した重要語句の種数が少なく、「情報の技術」と「情報Ⅱ」において、重要語句を基にした知識面での連携接続は、課題があると危惧された。departmental bulletin pape
イギリスにおけるシンセティック・フォニックスの指導と教材―小学校2校を訪問して―
抄録
本稿では,イギリスの小学校 2 校の訪問を通して,「Little Wandle Letters and Sounds Revised」と「Read Write Inc.」という,イギリス政府認定のシンセティック・フォニックスの教材と,それを使用して行われる授業の様子を報告した。どちらの教材も,国が示す具体的なプログラムに基づいて作成されているので,扱う基本の音素・書記素の内容とその指導の順番はほぼ同じであったが,少し異なる部分もあった。そこに教材作成会社としての考えが表れている。教材を学校で採用・購入すれば,教え方のビデオの視聴や,指導案,評価用資料,ワークシートのダウンロードが可能となる。また,カード,ポスター,約300冊のデコーディング用絵本がパッケージとして提供されていた。さらに教員研修も提供されていた。学校は,それぞれの実情に合わせて教材を選択し採用していた。
授業は,毎日決まった時間をフォニックスに当てていた。今回 1 年生と 2 年生の授業を見学したが,学年のはじめということもあり,1 年生はレセプションで,2 年生は 1 年生で学んだことの復習が主に行われていた。また,1 年生を 5 人ずつ取り出して,デコーディング用絵本を読む指導も行われていた。英語母語話者の子どもは,44の音素と同音異綴,トリッキーワード等を一つ一つ丁寧に,ブレンディングとセグメンティングを繰り返しながら時間をかけて学んでいる。日本におけるよりよいフォニックス指導について考えるためには,シンセティック・フォニックスについて深く理解する必要があり,本稿の報告がその一助になれば幸いである。departmental bulletin pape