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フランス ニオケル ロマンティック バレエ ノ リュウセイ ト スイタイ
学習院大学Gakushuin University博士(表象文化学)Doctor of Philosophy in Cultural Studies on Corporeal and Visual Representationバレエ史において、女性ダンサーが舞台の中心に立つのは、ロマンティック・バレエの成立時からである。それでは、ダンサーの中心が男性から女性になるというパラダイムシフトは、どのようにして起こったのか。また、フランスではロマンティック・バレエはどうして凋落したのか。本論では、女性中心の新しいバレエ文化の誕生という、バレエ史における大きな転換点に注目し、フランスにおけるロマンティック・バレエの隆盛、衰退の過程を考察するものである。
女性を中心としたバレエの誕生は、1831年にルイ・ヴェロンが新総裁として就任した時であった。パリ・オペラ座では、男性客に女性ダンサーを観賞してもらうために、女性ダンサーのスターシステムが構築され、物語は解りやすいように単純化された。結果、ロマンティック・バレエはムーブとなる。しかし、1840年代をピークにロマンティック・バレエは衰退していく。その衰退原因をスターシステムの歪みと物語の単純化に着目して考察するのが本論の目的であり、その構成は以下のようになる。
序章では、宮廷バレエからモダン・バレエの歴史を概観し、ロマンティック・バレエから女性が中心となったことを確認する。同時に、フランスでは観客の中心が王侯貴族から上層ブルジョワジー、そして一般大衆へと移行する過程で、見世物としてのバレエの価値が変容した点に着目し、社会情勢によって変化するバレエの様式について考察する。
第1章では、ロマンティック・バレエの成立と隆盛について論じる。第1節では、ロマンティック・バレエ確立以前のバレエ理論の変遷を確認する。総合芸術としての宮廷バレエから、ストーリーに主眼をおくバレエ・ダクシオンへと移行し、それが女性中心のバレエへと変わるまでには、様々な様式の変化があった。その変化のうち、例えば、衣装の重要性が増大したり、舞台全体の調和に努めるなど、ロマンティック・バレエに継承されたものはいくつもあったので、それらを明らかにする。
第2節では、ロマンティック・バレエの演出に不可欠なガス灯照明について検証する。ガス灯とライムライトによって、強力な光源と白系の光色の確保が可能となり、照明や衣装の改革によって、隠されていたスカートの中は晒された。蝋燭、オイル・ランプ、ガス灯へと照明のテクノロジーが進化していくにつれ、舞台上の演出も劇的に変化していったのである。
ロマンティック・バレエとは、ロマン主義の特徴である夢幻への憧憬や妖精信仰、異国趣味などが混ぜ合わされた「芸術」であり、夢幻世界を表現した舞台が大人気を博したのである。第3節では、ロマンティック・バレエの隆盛原因を社会的、文化的背景から考察し、第4節では、ロマン主義を具現化したスターダンサーの表象分析をおこなう。ロマンティック・バレエの成立と同時に隆盛した戦略は、ヴェロンの商業的手腕によるものであった。ヴェロンは女性美を際立たせるためのバレエ様式を作り、成功を収めた。しかし、20年ほどで衰微する。
第2章では、ロマンティック・バレエの衰退原因について、スターと群舞のダンサー、そして男性ダンサーに着目し、スターシステムの歪みについて考察する。パリ・オペラ座は、スターダンサーと群舞として舞台に立つ下級ダンサーに、男向け女向けの性道徳が異なるという「性の二重基準」を適用させ、憧れの女性であるスターダンサーを羨望の的として定着させる一方で、下級ダンサーを愛人関係を結ぶ身近な存在として男性客に提供したのである。
第1節では、象徴的な女性像を二律背反的に整理し、第2節で、ロマンティック・バレエのスターダンサーについて考察する。第3節では、性的対象と切り離せなかった下級ダンサーについて、第4節では、女性中心主義体制から排除された男性ダンサーに着目し、検証する。
スターシステムの歪みによるロマンティック・バレエの衰退原因は、女性中心主義にある。男性客にとって、男性ダンサーの存在は女性ダンサーを見る妨げでしかなかった。それが、男性ダンサーを排除した理由である。また、男性ダンサーを熱心に見つめる男性客の視線は同性愛的視線とみなされ、男性ダンサーが排除された可能性もある。
第3章では、19世紀において、観客が共感しやすい人間関係のパターンが登場人物間でも採用されていることに着目し、物語の単純化と創造性の停滞との関連性を検証する。観客が共感しやすい人間関係とは、男性同士の関係とその間に一人の女性がいる三角関係(男―男―女)と、男性が「妻(婚約者)」と「宿命の女」の間で悩む様子を示した三角関係(男―女―女)である。
第1節では、プレ・ロマンティック・バレエを、第2節では、ロマンティック・バレエ作品を分析した結果、悲劇的ロマンティック・バレエの人間関係は、各三角関係が一つずつ組み合わさった形を定型とみなすことができる。そして作品構造の変遷を検証した結果、物語の単純化は、複雑な人間関係から各三角関係が一つずつ組み合わさった定型へ、さらに三角関係の絆が希薄になっていく過程で生じたものである。
1850年代から、男性が一途に女性を思慕する物語が増加し、三角関係が単純化する傾向となり、革新的な作品は現れなくなった。優秀な作り手である男性ダンサーがいなくなり、物語の内容は有名作品の焼き直しでしかなくなる。創造性の欠落こそ、物語の単純化からみえてくる衰退原因である。
第3節では、ロシアのクラシック・バレエと比較することで、ロマンティック・バレエの問題点を浮き彫りにする。パリ・オペラ座は、振興ブルジョワジーを集客するために女性観賞に特化したバレエスタイルを貫いたが、観客の大衆化が起こらなかったロシアでは、ロマンティック・バレエを受け継ぎつつ、総合芸術としてのバレエが制作された。これは、それぞれの「バレエ」に対する目的の違いによって、進化の道筋が分岐した結果である。
パリ・オペラ座の女性中心主義によって、スターダンサーと下級ダンサーという二分化が進み、作品の主要な女性登場人物は「妻(婚約者)」のイメージと「宿命の女」のイメージに二極化された。ロマンティック・バレエはフランスの社会的背景のもとに「女性」観賞の目的で確立された男性経営陣による男性客のためのバレエ様式であり、そのスタイルに固執するあまり、衰退したといえる。
フランスにおけるロマンティック・バレエの衰退は、女性中心主義による男性ダンサーの欠如が要因である。つまり、ロマンティック・バレエの衰退は、パリ・オペラ座が女性中心のバレエ様式を確立した時点ですでに始まっていたのである。application/pdfdoctoral thesi
ホウセイドウ キサンジ ケンキュウ キビョウシ オ チュウシン ニ
学習院大学Gakushuin University博士(日本語日本文学)Doctor of Philosophy in Japanese Language and Literature本稿は、十八世紀後半に活躍した江戸戯作者の朋誠堂喜三二が執筆した黄表紙のうち、四作品を扱った四章二十二節の論に加え、小田原名物薬のういろうに関連する付論によって構成される。また、附録として、喜三二研究における翻刻影印注釈や主な先行研究一覧を添えた。
序章では、本論の研究課題と各章の要約、喜三二の生涯の概観を述べた。第一章から第四章にかけては、喜三二作の黄表紙に描かれる特定の登場人物に注目し、それぞれの形成過程や背景、作中における役割に関する調査・分析を通して、各作品における喜三二の趣向について考察した。以下に概要を記す。
第一章「『親敵討腹鞁』論」では、赤本『兎大手柄』、黒本『かち\/山』、そして喜三二作の黄表紙『親敵討腹鞁(おやのかたきうてやはらつづみ)』(安永六年〈一七七七〉刊)に登場するそれぞれの兎について考察した。第一節では昔話「かちかち山」に関する先行研究に触れ、第二節では、『兎大手柄』、『かち\/山』、『親敵討腹鞁』の三作品の性格的特徴を比較した。『兎大手柄』と『かち\/山』の方では正義感や賢さ、狡猾さがある一方、『親敵討腹鞁』の兎はその賢さ、狡猾さが抜けている代わりに、間抜けさや不信心といった頼りなさ、義理人情の厚さという要素があり、その不完全さが人間らしく描かれていると結論づけた。また、本来道徳的で心揺さぶられる場面も、それを擬人化した動物にやらせ、動物ならではの描写によって諧謔的で滑稽な場面に塗り替える趣向は、教訓的で真面目な昔話をどこまでユーモアにできるのかという喜三二の挑戦であると述べた。第三節では、絵の描き方の違いとして、三作品における兎の肉付きや頭部を比較した。『兎大手柄』の兎の姿に比べると『親敵討腹鞁』の兎には狸を倒すような強さはなく、体格でもその強さは表現されていない。画師の違いもあるが、内面的なもの絵に反映されていると結論づけた。また、頭部の描写では、『兎の大手柄』から『親敵討腹鞁』への過程を見て、いわゆる動物の「兎」から「兎の顔をした一人の登場人物」へと昇格したことを確認した。最後に、『親敵討腹鞁』の兎のような擬人化表現の背景について、近世において人間主義への関心が高まりと、黄表紙特有の「うがち」の見方を関連づけて論じた。
第二章「『龍都四国噂』論」では、『龍都四国噂(たつのみやこしこくうわさ)』(安永九年刊)中で佐治兵衛が物真似をする二代目八百蔵について、物語の構造と合わせて考察した。第一節では板元蔦屋重三郎と絡めた本作の刊行背景について先行研究を取り上げた。第二節では実在した二代目八百蔵に取材した追善物の出版流行に触れ、本作に隠されている地獄めぐり譚の物語構造との関連について論じた。第三節では、源内と喜三二の繋がりに関する先行研究を踏まえつつ、『龍都四国噂』が源内作『根南志具佐(ねなしぐさ)』(宝暦十三年〈一七六三〉・明和六年〈一七六九〉刊)の影響を受けている箇所について分析し、本作が源内に対する喜三二の敬意が表れた黄表紙の希少な例であると結論づけた。四節では、『龍都四国噂』論のまとめとして、作品評価を述べた。五節では『龍都四国噂』の翻刻と注釈を試みた。
第三章「『天道大福帳』論」では、『新建立忠臣蔵天道大福帳(てんとうだいふくちよう)』(天明六年〈一七八六〉刊)の「天道」の図像と呼び名について、二十四の関連作品との比較から、人物のイメージや戯作者間の関係性など、物語背景への読み解きを試みた。『天道大福帳』の「天道」が日輪を擬人化したような姿をしており、天の主宰者的立場の人物(「天の主宰者」と略す)の代表格として後続する黄表紙に幾度も描かれた。第一節ではいわゆる天界ものの黄表紙と『天道大福帳』の「天道」の人気の背景について述べ、研究課題を提示した。第二節では、黄表紙に登場する天の主宰者の呼び名には「天道」と「天帝」が多いことに触れ、第三節では前節を受けて、二十四作における図像と呼び名の関係について分析した。図像には主に三つの型の系統に別れ、呼び名によって使用される図像の型の傾向もそれぞれ異なることや、天の主宰者の描き分けが初めから明確に認識されていたわけではなく、天界を題材とした黄表紙が複数刊行されていく過程で次第に区別されていったことを示した。第四節では天の主宰者像をめぐって、喜三二と山東京伝との関係性について言及した。第五節では、『天道大福帳』の「天道」が持つ神秘性と人間性から生まれるユーモアや愛らしさといった魅力について論じた。
第四章「『文武二道万石通』論」では、寛政の改革を取り上げた『文武二道万石通(ぶんぶにどうまんごくとうし)』(天明八年刊)の畠山重忠について考察した。第一節では、この登場人物に松平定信や四代目松本幸四郎の当て込まれていることに関して先行研究を取り上げ、研究課題も提示した。第二節では黄表紙以前の文芸における重忠像の形成について整理した。知略に富み、現実的ではあっても、情け深く物分かりの良い人物像を構築したのは、中世の曾我物や景清物の謡曲や幸若舞、そしてそこから発展した浄瑠璃や歌舞伎などの芸能であった。第三節ではこれを受けて、喜三二作品における重忠像について、『珍献立曾我(めづらしいこんだてそが)』(安永六年刊)から『文武二道万石通』に至るまでのまでの作品を比較し、その変遷を確認した。黄表紙における重忠の描写は景清物の「大仏供養」の件が取り上げられることが多く、喜三二作品でも同様の傾向が見られる。喜三二は自身の黄表紙に幾度も重忠を登場させてきたが、その中で構築されてきた重忠像の到達点を『景清百人一首(かげきよひやくにんいつしゆ)』(天明二年刊)に見ると結論づけた。第四節では、『文武二道万石通』の異版の問題に触れた上で、他の寛政改革に取材した黄表紙との比較しながら、『文武二道万石通』における重忠像の描写について考察した。『文武二道万石通』における重忠、四代目幸四郎、そして定信と三人も重ねて一人の人物像とする複雑な描写は、喜三二のこれまでの執筆過程での習練なくしては成し得なかった。本作は寛政改革に取材した黄表紙における重忠像を生み出した先蹤的な作品と言える。最後に、喜三二の寛政改革の当て込みに対する姿勢についても言及した。
付論「小田原名物ういろうと江戸文芸」では、小田原の名物で、日本最古の製薬と言われるういろうについて、歴史的背景と江戸文芸との関係性について論じた。第一節では、この薬の江戸当時の評判を紹介し、研究課題を提示した。第二節では、十四世紀後半に明より霊宝丹(れっぽうたん)という薬が日本にもたらされたことから始まる、ういろうの歴史と効能に関する史料を取り上げた。第三節では、享保三年〈一七一八〉に二代目市川団十郎によって初演された「外郎売」の科白の内容や表現方法について論じた。薬の由来を語るだけでなく、様々な修辞法を用いた言語遊戯や頼光伝説が含まれており、文芸的な価値も高い。第四節では、ういろうに取材した黄表紙や滑稽本など江戸文学をみていき、薬の取り上げ方について論じた。「外郎売」の科白自体が庶民の間で広まったことで、特に滑舌の良さの印象が薬と結びつけられるようになった。「外郎売」の科白の流行は喜三二の随筆『後はむかし物語』の中でも触れられる。小田原ういろうは、その効能とともに「外郎売」の科白を広めたことで、江戸文芸に豊かな味わいを与えたと結論づけた。
本研究によって、喜三二作品の登場人物がいかに多くの既存の物語や人々の物事に対する認識、当時の出来事などが反映されていたかが明らかになった。そして、それらを巧みにまとめ上げる喜三二の技量の高さを確認するに至った。江戸後期の文芸における古典作品や文化の享受のあり方への理解を深める上で、黄表紙の研究は有用性が高いものである。application/pdfdoctoral thesi
SDS オヨビ DTAC ミセル ナイブ ニオケル ホウコウゾク ブンシ ノ ヒカリ イオンカ ト コウイセイカ スイワ デンシ ノ セイセイ ト ミセル ナイブ ノ ネンド ヒョウカ
学習院大学Gakushuin University博士(理学)Doctor of Scienceドデシル硫酸ナトリウム(SDS)およびドデシルトリメチルアンモニウムクロリド(DTAC)が形成するミセル内部にtrans-スチルベンや3-メチルインドールを可溶化させ,フェムト秒時間分解可視近赤外分光法によってこれらの分子の光イオン化反応と光異性化反応を観測した.光イオン化反応によって生成した電子の水相での溶媒和過程を解明し,光異性化反応からミセル内部の粘度を評価した.
ミセル内部で生成した電子は,水相に移動し溶媒和されて水和電子となる.バルクで生成した電子の大部分はラジカルカチオンとの対再結合によって消失してしまうのに対し,ミセル中で生成した電子は,ミセル内部に閉じ込められたカチオンと分離されるため,非常に長い寿命をもつ水和電子を作る可能性がある.本研究では,水に不溶であるtrans-スチルベンをSDSおよびDTACのミセル内部に可溶化させ,それらを光イオン化させることで生成させた電子を観測し,光異性化反応の速度からミセル内部の粘度を評価した.また,水中で一光子光イオン化反応が進行するインドールの誘導体である3-メチルインドールを用いて,ミセル中での一光子光イオン化反応と,電子の水相における溶媒和過程を観測した.
第一章では,溶液中における電子,および界面活性剤の性質について述べた.液体アンモニア中の溶媒和電子は,ベンゼンなどの芳香族化合物を還元する非常にユニークな化学種である.芳香族化合物とアンモニア中の溶媒和電子の酸化還元反応は,Birch還元として知られるポピュラーな反応の1つである.水中においても,溶媒和電子の存在が確認され,現在までに数多くの研究が行われてきたが,水中での”Birch還元”を完全に達成した例はいまだ報告されていない.この理由の1つとして,水中で生成した電子の大部分は,同時に生成したラジカルカチオンとの対再結合によって数ピコ秒以内に消失してしまうことが挙げられる.
SDSやDTACのような界面活性剤は,アルキル基を内側に向けた球形のミセルを形成する.このようなミセルは,その内部に水に難溶である様々な分子を取り込むことで水中に可溶化させる.ミセル中に可溶化させた分子に紫外光を照射すると,水和電子が生成することはすでに見出されていた.しかし,ミセル中で生成した電子がどのように水相へ移動し,そこでどのように溶媒和されるかについては明らかになっていない.ミセル中で分子を光イオン化させると,生成した電子が水相へ放出される一方で,ラジカルカチオンはミセル内部にとどまることが期待される.したがって,ミセルの効果によって,ラジカルカチオンと電子の対再結合が阻害され,長寿命の水和電子を効率よく生成できる可能性がある.ミセルは,溶液中に水と油の微小な界面を形成しているととらえることができる.ミセル中で進行する一部の化学反応は,バルクとは異なる反応性を示す.そのため,ミセル内部の環境を調べることは重要である.アルキル基で構成されたミセルの内部は,アルカンに類似した性質を示すことが予想される.本研究では,ミセル内部での芳香族分子の光イオン化や光異性化を観測し,ミセル中で生成した電子の挙動およびミセル内部の物性を研究した.
第二章では,SDSおよびDTACが形成するミセルの性質について説明し,それらのミセルの内部にtrans-スチルベンを可溶化させて光イオン化反応と光異性化反応を観測した実験およびその結果と考察をまとめた.紫外光を照射されたtrans-スチルベンは,多光子過程による光イオン化と,最低励起一重項(S1)状態を経由するtrans-cis光異性化を起こす.310 nmの紫外光によってミセル内部のtrans-スチルベンを励起すると,水和電子とtrans-スチルベンのSn←S1遷移に帰属される吸収帯が観測された.グローバル解析の結果から,水和電子の寿命はSDSおよびDTACのミセル水溶液中において,本実験で測定できる時間領域よりも長く,3 nsまたはそれ以上であると見積もられた.この結果から,ミセルによってラジカルカチオンが閉じ込められ,水和電子が長寿命化している可能性を強く示唆した.また,700 – 800 nmにおいて,水和電子の吸収帯は150 – 280 fsで立ち上がっていることがわかった.そのため,ミセル中で生成した電子が水相へ移動するのにかかる時間は150 – 280 fsであることが示唆された.本測定において,界面活性剤がもつ電荷の違いによる有意な差は観測されなかった.
ミセル中でのS1 trans-スチルベンの寿命から,光異性化反応の速度定数を算出した.この反応の速度定数は,溶媒の粘度とよい相関を示す.ドデカン中で測定された光異性化反応の速度定数と比較することで,ミセル内部の粘度を評価した.SDSミセル中およびDTACミセル中におけるS1状態にあるtrans-スチルベンの寿命はそれぞれ102 psおよび107 psであり,ドデカン中での測定結果(100 ps)と一致した.この結果から,SDSおよびDTACのミセル内部の粘度はドデカン中とほぼ等しいことがわかった.
第三章では,ミセルに可溶化させる分子として3-メチルインドールを選択した場合の結果を示し,ミセル内部で生成した電子が水相へ移動して溶媒和されるまでの過程について考察した.ミセル中に封入したtrans-スチルベンを光励起すると,水和電子の吸収帯の一部とtrans-スチルベンのS1状態による吸収帯が重なってしまい,電子の溶媒和過程を詳細に解析することが困難であった.インドールは,水中でのイオン化ポテンシャルが4.35 eVと比較的低く,250 nmの紫外光を照射すると一光子光イオン化反応が進行する.また,インドールのSn←S1バンドは400 nmよりも短波長に位置し,電子の吸収帯と重ならない.本実験では,水に可溶なインドールに疎水性のメチル基を導入した3-メチルインドールをSDSおよびDTACのミセルに可溶化させた.250 nmの紫外光でミセル中の3-メチルインドールを励起したところ,低エネルギー側から電子の吸収帯が立ち上がる様子をS/Nよく観測することができた.励起光強度を変えて測定を行ったところ,ミセル中での3-メチルインドールの光イオン化は一光子過程で進行することがわかった.解析の結果から,ミセル中で生成した電子は320 fs以内に水相へ移動していると考えられる.また,界面活性剤の電荷の違いによって水相へ放出されるまでの時間に有意な差は観測されなかった.水相へと移動した電子は,その後430 – 510 fsで水分子に溶媒和される.水の二光子光イオン化反応や,ヨウ化物イオンの溶媒への電荷移動(CTTS)過程によってバルクの水中で生成した電子の溶媒和時間は500 – 540 fsと報告されており,本研究の結果と一致する.そのため,ミセル内部で生成した電子は,非常に短い時間で水相へ放出され,バルクで生成した場合と同様に水分子によって溶媒和されると考えられる.本実験では,ピコ秒領域で減衰する水和電子の信号を観測していない.これは,ミセルがカチオンを閉じ込めることによって電子との対再結合が阻害され,長寿命の水和電子を生成できたことを強く示唆している.
第四章で,著者が行った研究を総括した.フェムト秒時間分解可視近赤外分光法によって,ミセル中に可溶化させた芳香族分子の光イオン化反応と光異性化反応を観測し,ミセル中で生成した電子の水相での溶媒和過程を解明するとともにミセル内部の粘度を評価することができた.ミセル内部に封入した分子の光イオン化によって,長寿命の水和電子を効率よく生成させる可能性を強く示唆する結果が得られた.また,アルキル基で構成されたミセル内部の粘度は,炭素鎖長の等しいアルカンの粘度とほぼ一致することがわかった.application/pdfdoctoral thesi
Fostering Global Citizenship through Extracurricular Activities : A Critical Examination of Global Human Resource Development as a National Policy
application/pdf研究論文departmental bulletin pape
コヨウ カンリ ノ トリクミ ガ ロウドウシャ ノ シゴト マンゾクド ニ アタエル エイキョウ JILPT 2018 チョウサ ノ マッチング データ オ モチイテ
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17 18 セイキ ドイツ ノ キュウテイ ユダヤ キョウト タイトウ ノ シャカイ ケイザイテキ ナ ヨウイン
application/pdfdepartmental bulletin pape
AI シャカイ ニオケル リンリ ト ブンカテキ ブンミャク 2022 2023 ネン ニチベイチュウ ノ シャカイ チョウサ カラ
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Yugiri and Kashiwagi in The Tale of Genji ; as a Flower and a Leaf Born From The One Root
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