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多成分高分子混合系における反応誘起相分離現象の研究を振り返って
光重合誘起相分離現象についてまとめた。今までの反応拡散系の理論について検討しながら、収縮や自己触媒などの重合系の特徴が相分離に影響を及ぼす効果などについて解説した。最後に、高分子材料の導電化における応用例について述べた。京都工芸繊維大学 学術報告書,第11巻,2018.09,pp.1-1
ファイバー要素でせん断変形を考慮した弾塑性平面梁-柱有限要素モデルの開発
京都工芸繊維大学博士(学術)本論は,せん断変形を考慮するいくつかのファイバー要素で構成される新しい平面梁-柱有限要素法を増分摂動法により定式化して提案している。各ファイバー要素におけるせん断ひずみ分布は,弾性状態のせん断ひずみ分布によって仮定している。ファイバー要素における垂直応力-ひずみ関係とせん断応力-ひずみ関係は,互いに異なる構成則に独立で従うと仮定されている。提案解析法(FERTs-P)の検証は弾性平面梁の問題,シェル要素による有限要素解析および鋼梁実験のシミュレーションで行われている。弾性平面梁のせん断変形と曲げ変形の比率は理論値とほぼ一致し,せん断降伏する梁のシェル要素による有限要素解析と実験の荷重変形曲線を良く予測している。さらに,骨組全体の解析につなげるため,FERTs-Pで梁ウェブの塑性局部座屈問題を扱うための効果的な手法の構築を目指して,H形鋼のウェブがせん断応力によって局所座屈するときの応力の変化を調べた結果を整理している。ウェブの垂直応力とせん断応力分布はシェル要素による有限要素解析により検討され,それらの関係性について述べている。単調載荷時に,ウェブが塑性局部座屈する場合には,ウェブの有限要素で垂直応力が増加し,せん断応力が急激に減少する。このとき,応力の大きさの大小関係が入れ替わる現象が起きている。有限要素解析による数値実験によってファイバーモデルの応力-ひずみ関係をモデル化するための一方向載荷時における塑性局部座屈発生時のせん断応力の予測式を示している
Effects of Direct Fiber Feeding Injection Molding on the Structure and Properties of Fiber Reinforced Polypropylene Composites
京都工芸繊維大学博士(工学)For a further extending the application of short fiber reinforced polymer composites, pultrusion and direct in-line long fiber thermoplastic compounding technology are used in industry. However, those methods have some limitations such as low efficiency, high investment cost, and unstable quality. In this thesis, the main purpose is to obtain a higher performance fiber reinforced polypropylene composite by using a new method known as direct fiber feeding injection molding (DFFIM) to avoid the limitations mentioned above. First, the effect of process parameters including the number of fiber bundles, the number of fibers altogether feeding and pellets feeding speed on the mechanical properties of glass fiber reinforced polypropylene composites fabricated by DFFIM are discussed. The fracture surfaces were observed by scanning electron microscopy. Then, the tensile properties of glass fiber/carbon fiber reinforced polypropylene hybrid composites fabricated by DFFIM were predicted by considering fiber length and orientation using the modified Tsai-Hill criterion. The accuracy of the modified Tsai-Hill criterion was compared with other methods and then the most suitable approach to predict modulus and strength was determined. Moreover, the structure and interfacial shear strength were evaluated based on the skin-core-skin structure and modified Kelly-Tyson equation. The fiber dispersion status and interfacial shear strength (IFSS) of DFFIM hybrid composites in different layers were examined according to the skin-core-skin structure. The fiber dispersion status was evaluated qualitatively by scanning electron microscopy and quantitatively by the fiber distribution index (FDI). The IFSS between fibers and polypropylene of different composites in the skin layers and the core layer are discussed by considering fiber length and orientation distributions. Lastly, two types of vented injection molding machines with a different check ring and mold were used for manufacturing specimens. The fiber lengths were analyzed to identify the most suitable check ring and mold for the DFFIM process. Polyamide 6 and maleic anhydride-grafted polypropylene were incorporated as the auxiliaries to improve the interfacial bonding between the fibers and matrix and to enhance the stress transfer in the DFFIM composites
操作ログの類似検索機能を有したCLI操作協調学習支援システムの試作
近年,動画コンテンツの教育利用に注目が集まっており,今後様々な場面において動画コンテンツが利用されるようになると考えられる.その動画コンテンツの使用例として,CLI操作での活用に注目した. 本研究では,CLI操作時の画面動画と操作ログを記録し,エラーメッセージの検索により学習者間で相互に関心がある場面の動画を閲覧できるCLI操作協調学習支援システムを試作した.同じ演習内容であってもコマンド入出力の内容は学習者の実行環境によって差異が生じるため,システムの実現のためには類似検索機能の実現が必要であった.そのため本システムでは,形態素解析を用いてエラーメッセージの類似検索機能を実現した.出典:情報処理学会研究報告 Vol.2018-CLE-25 No.4 (情報処理学会著作権規程 第5条に基づく転載)利用上の注意: ここに掲載した著作物の利用に関する注意 本著作物の著作権は情報処理学会に帰属します。本著作物は著作権者である情報処理学会の許可のもとに掲載するものです。ご利用に当たっては「著作権法」ならびに「情報処理学会倫理綱領」に従うことをお願いいたします
起床前漸増光がより良い目覚めと日中の活動をもたらす要件について
京都工芸繊維大学博士(学術)現代社会における睡眠問題のひとつに起床時の困難性があげられ,健常者であっても目覚めが良好とは限らず,子どもについても例外ではない.起床時の目覚め感を改善する一手段として,起床前から光を微弱に点灯させ始め,起床時に最大出力となる起床前漸増光(DS:Dawn Simulation)という照明制御手法があり,健常者の目覚め感の改善が報告されている.しかし,先行研究によってDSの光に関する要件が異なり,ヒトが受光する光量や受光中の睡眠状態を考慮した研究は少ない.また,季節性感情障害患者と比べて健常者についての知見は限定的で,とりわけ子どもへの影響,DSの影響がより明瞭にみられる属性についての研究は少ない.そこで本研究では,これら未解明のDSを受光するヒトにかかわる要件について検討した. まず,DS受光時の要件について,DSによって起床前に受光する光量と起床前の睡眠状態とに着目し,それらが起床時の主観的な眠気におよぼす影響について,20名の若年成人男性を対象として終夜睡眠実験により評価した.評価項目はPSG(Polysomnography;睡眠ポリグラフィ)による睡眠段階とOSA睡眠感調査票による起床時の主観的な眠気(OSAⅠ起床時眠気スコア)とし,DSの受光量は1秒毎の寝姿勢から推算した.起床時刻30分前から徐々に光の出力を増加させる漸増光条件(DS条件)と漸増光のない条件(No-DS条件)の2つを比較した.その結果,起床前の受光量が多い群(30分間の受光量が4[log (lx)・1/2 (hour)]以上)ではDSによって眠気が低減する傾向にあるが,受光量の少ない群では条件間に有意差はみられなかった.また,起床直前の睡眠状態がNREM睡眠の群ではDSで眠気が低減されたが,REM睡眠Phasic期(急速眼球運動が頻回に発生している睡眠期)から起床した群では,条件間に有意差はみられなかった.REM睡眠Phasic期から起床した被験者を除くと,漸増光の受光量とOSAⅠ起床時眠気スコアとの間に相関関係がみられ,受光量が多いほど眠気が低減することが示された.以上の結果から,起床時の眠気を低減させるためのDS受光時の要件として,十分な起床前漸増光の受光に加えREM睡眠Phasic期ではない睡眠状態からの起床が必要であることが示唆された. 次に,DSの小学生への影響を検討した.事前に同意を得た小学生33名を対象にDSが起床時や日中の気分におよぼす影響を評価した.LED天井照明を用い,起床時刻30分前から徐々に光の出力を増加させるDS条件とDSのないNo-DS条件の2条件で,連続して一週間同じ条件を2回実施し,計4週間,評価用紙への記入とミニテストを平日に毎日実施した.加えて保護者に子どもの機嫌や起床方法の評価を依頼した.その結果,DS条件で起床時気分や午後の集中感等の有意な向上が,ミニテストの成績が高い値を示す傾向が,保護者からみた子どもの機嫌や自立起床割合の有意な改善が示された.それらの改善は利用開始4日目以降にみられた.以上の結果から,DSの習慣的な利用によって,小学生の起床時気分に加え日中の気分や集中感が向上すること,起床後のパフォーマンス向上や自立起床を促す可能性が示唆された. 続いて,DSの影響と生活習慣との関係についても検討した.実験参加前に同意の得られた146名の健康な男女(81名の小学生;3年生~6年生),17名の大学生,48名の大人;30~50歳)を対象に,被験者宅においてDS条件とNo-DS条件の2条件を実施し,1条件につき平日に連続して5日間評価した.実験開始前に普段の生活習慣(睡眠時間など)に関する調査票の記入を依頼し,実験期間中には主観的な眠気や集中感などを日々評価した.被験者毎に各条件の主観評価値の中央値を求めて比較し,主観評価の項目毎に,改善した被験者をPositive群,それ以外をNon-positive群として,実験前に取得した生活習慣を群間で比較した.その結果, Positive群は,普段の起床時刻が早く,普段の睡眠時間が短く,運動習慣を有しない被験者比率が大きいことが示された.これらの結果から,起床前漸増光の影響は,相対的に良好でない生活習慣をもつ被験者に対してより明瞭となることが示唆された. 起床前漸増光がより良い目覚めと日中の活動をもたらす要件について,未解明の部分が残されてはいるが,本研究で明らかにできたDSを受光するヒトにかかわる要件として,DS受光時の要件では,起床時の目覚めを良好にするために,十分な漸増光の受光に加え起床前の睡眠状態がREM睡眠Phasic期を避ける必要性が示唆され,DSの影響と属性との関係については,習慣的な使用によって子どもに対し良好な影響をもたらすことが示唆され,大人まで年齢層を拡大すると,相対的に良好でない睡眠習慣を有する人々に対して,DSの影響がより明瞭となることが示唆された.これらの要件の活用によって,ひとつは起床前の生体情報と連動することで不適切な睡眠状態からの起床を避け,かつ十分に起床前漸増光を受光すると,1回の使用であっても健常者の目覚め感を改善できる可能性が考えられる.加えて,もうひとつの要件である子どもへの影響ならびに属性に関する要件については,本知見を活用することによって,確かな科学的裏付をもって啓発活動を推進し,漸増光の恩恵を社会に普及させて子どもの睡眠を守ることに貢献できるという展望が得られる.いずれの知見に関しても,起床時の眠気低減や気分改善にとどまらず,習慣的使用によって日中の活動を良好にし,睡眠の質向上につながり,ひいては生活の質の向上が期待できるため,社会の維持発展に貢献する研究成果であると考える
熱可塑性エラストマーの大変形挙動の研究
京都工芸繊維大学博士(工学)熱可塑性エラストマーの大変形挙動は製品設計において重要な課題である.しかしながら大変形にともなうネッキングや発熱のため,その力学挙動の評価を困難にしている.そこで本研究ではデジタル画像相関法とそれに同期化したサーモグラフィックを用いて非接触にネッキング箇所の真ひずみやネック部の発熱を計測,ネックを伴う大変形の力学挙動を考察した
柔軟体の貫入による破壊の物理学的因子分析と圧子形状への依存性評価
京都工芸繊維大学博士(工学)本論文は、小さな力でも大きな変形が起こりやすい性質を持つ物体である柔軟体について、適切な取り扱いのための物理学的分析、特に貫入に伴う破壊に関する因子の分析を数値シミュレーションによって行い、その破壊現象を評価する次に挙げる研究を実施した。 第1章において、研究背景と本論文の目的および構成について記述した。 第2章において、貫入による破壊を確認するため、圧子押込みによる柔軟体の変形について理論を調べ、低密度の発泡体に対して押込試験を行った。押込試験においては2種類のポリスチレン発泡体(JIS A9521 XPS3bAⅡ、XPS1bC)に対して、直径の異なる球圧子により押込みを行い、その貫入量と圧子に加わる荷重を計測した。押込試験結果より、柔軟体の押込みに対する様相をその貫入量と荷重の関係に対して弾性、圧壊、過渡、破断の4つの領域に分類した。 第3章において、一般に貫入後の破面観察により多くの情報が得られることから、貫入による破断形態を確認した。押込試験後の試験片を切断しその断面を観察することにより、発泡体XPS3bAⅡで円錐台形状の破断が確認できた。また、発泡体XPS1bCにおいては、円錐台形状の破断と円柱状の破断の2種類の破断の混在が観測できた。この2種類の破断における貫入量と荷重の関係の対応を調べた結果、破断領域において円錐台形状の破断に対しては荷重の増加、円柱状の破断に対しては概ね一定の荷重という対応が確認でき、この対応関係を基に円錐破断モデルを作成した。この円錐破断モデルは、発泡体のプラトー応力などにより荷重の増加率が決まるため、試験結果に対して逆解析を行うことで発泡体のプラトー応力を求めることができる。この手法により、発泡体XPS3bAⅡについては安定した値が得られたのに対して、発泡体XPS1bCについては不安定な値となったことから、この手法は発泡体内部で円錐台形状の破断のみが発生している場合に有効と考え、円錐破断モデルによるプラトー応力の計算手法とその適用範囲を提案した。 第4章において、発泡体XPS1bCに発生する破断領域における一定荷重について有限要素解析による数値シミュレーションから、その破壊に関する因子の分析を行った。発泡体の貫入においては、引張とせん断による破壊が含まれていると考え、主ひずみとせん断ひずみを破壊条件とした解析を行うことで、低密度の発泡体に対する押込みによる貫入破断の分析を行った。その結果、せん断ひずみのみを基準とした条件により貫入破断を表現することができ、さらにせん断ひずみにより発泡体の見かけ上の強化や脆化が起こることを示した。これにより、せん断ひずみを低密度発泡体の破壊因子とすることの妥当性を示した。 第5章において、より基本的な物性を持つ弾性体への圧子貫入について、せん断ひずみによる破断を考慮した有限要素解析による数値シミュレーションを行うことで、柔軟体の破壊現象に対する圧子形状の依存性を確認した。圧子モデルの形状として針状のものを想定し、その先端について円錐形状と刃物のように先端が線状に広がった形状を作成し、せん断ひずみを破壊条件とした弾性体モデルへ貫入させた。その結果、円錐形状では表面から円状の破壊が発生しそれを押し広げる形の破壊が発生し、先端が線状に広がった形状の圧子では表面に線状のき裂が発生しそれを切り広げる形の破壊が発生し、破壊現象に対する明確な依存性が見られた。これにより、表面の破壊形態を基準として針形状の評価が可能になることを示した
複合メディア環境における視聴者自身による映像コンテンツの現地化に関する研究――中国字幕組のファン・エスノグラフィ
京都工芸繊維大学博士(学術)字幕組とは中国語の呼称であり、視聴者による映像コンテンツのテキスト翻訳・字幕をつける一連の作業を行うグループのことを指している。 本論文では、日本アニメ及びその関連コンテンツの中国の字幕組を対象に、今日の複合メディア環境において視聴者自ら現地化したコンテンツ 受容のされ方に注目した。視聴者のネットワーク化とメディア化がいかにコンテンツ受容に影響を与えてきたのか、とりわけコンテンツ受容の 手段と形態がマスメディアにとらわれない状況に進んできており、その中視聴者が手がける―つまり「ファンサブ」―のようなコンテンツ受容 の並行の結果はいかに立ち現れ、どういう意味があるのか、の一端を明らかにしようとすることである。この目的を果たすために、中国におけ る字幕コンテンツの利用者及び字幕組メンバーを対象とするオンライン・エスノグラフィを行った。第一部である序章、1 章では、本研究が依拠する先行研究を検討し、研究対象を捉えるための枠組み及び諸概念を提示した。特に字幕コンテンツを現在UGC(user-generated contents)として注目されつつある一般の個人作り手のコンテンツと区別するため、UMC(user-modified contents)と定義することを試みた。第二部である第2、3 章では、今日の情報社会において、視聴者あるいは受容者がメディア化する手段と過程及び、コンテンツの愛好者の視点から行った意味解釈に注目した。具体的に、字幕コンテンツのファイル共有問題を考察し、ファイル共有はアップロードされる時からダウンロードされる時まで、利用する主体が変わるだけでなく、ファイルそのものは「改変され(modified)」、変質する可能性があるということを明らかにした。そして、字幕組は字幕付きファイルを共有するだけでなく、コンテンツに新たな意味を積極的に生産している。そうした過程を介して、コンテンツが蓄積され、ファンの棲み分けも進展していった。さらに、視聴者あるいはファンのコミュニティは単純なヒエラルキーを形成するではなく、いくつか重要な土台を共有しながらも、変形・変質を経て、オンラインで生態系に類似するものを形成していることを考察した。第三部では、以上の議論を踏まえて、オンライン・エスノグラフィの調査結果を記述・分析した。まずは第4 章では、本論文の主な方法論について議論した。字幕組が活動拠点とするインターネット上で、コンテンツ受容をめぐるコミュニケーションが様々な立場の参与者の間で行われている。そうしたコミュニケーションから生まれる文化、そうした文化を共有する人間の相互作用の意味を洞察・記述するには、オンライン・エスノグラフィの方法は有効であると論じた。そして第5 章では、オンライン・エスノグラフィのアンケート調査の結果と分析について記述した。オンライン・エスノグラフィは伝統的なエスノグラフィの手法と比べると、フィールドに没入する期間及び扱う観察対象の記述がより困難である。そのため、戦略的にフィールドを構築することが必要である。オンラインでの参与観察を経て、字幕コンテンツの利用者層が主に活動するウェブサイトあるいは利用するオンライン・サービスから、最も重 複に利用されているウェイボーが浮上した。したがって、ウェイボーを介してアンケート調査を行った。また、利用者層の成長性を見込んで、記述式のアンケート調査も並行に実施した。調査の結果、字幕コンテンツの視聴者は流動的であり、字幕組コンテンツの受容を核心に視聴者あるいはファンは成長し、分層・棲み分けもしていく。最後に第6 章では、字幕組メンバーへのインタビュー調査の結果及び分析を記述した。エスノグラフィック・インタビューから得られた「語り」そのものはファン・エスノグラフィの1 つの成果であるが、さらにその語りのデータを対象とする質的分析を行った。字幕組が扱うコンテンツの種類及び活動理念に注目すれば、大まかに「共有文化系」から「ファン文化系」までという尺度があることが分かった。扱うコンテンツの種類について、日本のテレビアニメなど一般作品から、その派生ないし2 次・n 次創作作品まで幅広く含まれている。字幕組の活動理念に関して言えば、基本的に、共有文化系は映像制作や翻訳における技術と知識を含めて共有する傾向にあり、コミュニティ間ないしグローバルなネットワークも構築する傾向がある。対して、ファン文化系は比較的に閉鎖的で、コミュニティ内の内輪ルールが多い上、コミュニティ間の衝突も多い傾向がある。字幕組が行う活動には、視聴者が変化を図る動機、改変の試みそして、視聴者に受けいれた変化の結果の示唆が含まれていることを明らかにした。視聴者あるいはアマチュアが行う映像の字幕付き活動及びその産物は商業活動のような規範的な基盤をもっていない。その活動の内実また集団の形態の自由度も高い。しかし、その自由度の高さはその活動に含むかねないコンテンツの無断利用などの脆弱性に成り立っていると言える。結局、今日情報社会における映像コンテンツのグローバルな受容について、コンテンツが持つ作品性と商品性を分けて考えれば、コンテンツ作りと受容の多様性のための新たな規則の構築に有意義かもしれない。それは具体的に、映像翻訳の役割をプロフェッショナル領域から解放し、コンテンツ流通をパッケージ商品の一種類だけから解放するという2 つの意味が含まれている。本研究の知見は、今日の情報技術基盤に対応した、特にコンテンツのグローバル的な展開をめぐる制作と受容のコミュニケーション研究に有意義であると考えられる