Showa University Academic Resource Repository / 昭和大学学術業績リポジトリ
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アクティブ・ラーニング
アクティブ・ラーニングとは学生による主体的な学びを引き出すための教育・学修の技法の総称であり,単純な自習や放置することを指す用語ではない.従来,日本で重用されてきたような詰め込み型教育では頭打ちとなった汎用性の高い能力や問題解決能力を育成するために,米国をはじめ世界中で採用されている.ある課題に対して行動するだけでなく,常に考えながら解答を模索・探求することが学生には求められ,そうした活動を教員や優秀な学生がファシリテートすることでアクティブ・ラーニングは推進する.文科省は大学を学生が「生涯学び続け,主体的に考える力を育成する」高等教育機関として再定義しており,「学士力」の高い卒業生,すなわち優れた国際競争力を有した人材を輩出することを期待している.そのためには目標設定と学修の遂行を維持するモチベーション,知的探求心を生み出すカリキュラムを教員が創出する必要がある.将来,医師になる学生が大半である医学部では,知識の蓄積だけでなくアクティブ・ラーニングを通じて獲得することが可能な総合的な能力に加えて,Medical Artの素養,プロフェッショナリズムの涵養,そして何より患者に寄り添い誠心誠意尽くす精神として「至誠一貫」が求められている.それらを楽しみながら学ぶ機会を提供できるように著者らは新カリキュラムを設計・構築した.アクティブ・ラーニングを主体とした医学教育の推進で最も重要な点は「授業外学修」の時間を増加させ,学生のラーニングエンゲージメントを高めることである.優れた教育機関では建設的なディスカッションや創造性の高いグループワークを教育コンセプトの柱としており,もはや物理的な教室という概念すら無くなりつつある.反転授業やゲーミフィケーションなど煩雑ながらも高い教育効果が期待できる最新の教育手法を積極的に採用し,併せてICT/IoTの利活用により教員の負担を軽減することで,昭和大学医学部では他の医学部では達成できていない先進的かつ持続可能な新カリキュラムを遂行することが可能となった.学生のモチベーションを高める種々の仕組みを開発し,デブリーフィングやピア・ティーチングを積極的に行うことで学生が学んだ内容を深く定着させることが可能となった.departmental bulletin pape
大腸管状腺癌および管状腺腫におけるCD71/transferrin receptor 1発現と病理組織診断への応用に関する臨床病理学的検討 ―腺腫内癌におけるCD71発現の比較検討を用いて―
Ⅱ型膜貫通糖タンパク質であるCD71/transferrin receptor 1は,鉄の取り込みと細胞増殖調節に関与するタンパク質で,種々の癌での発現が報告される.大腸管状腺腫および管状腺癌のCD71発現を免疫組織化学で評価し,病理組織診断におけるCD71免疫組織化学の有用性を検討した.内視鏡的切除術を受けた大腸管状腺腫28例,管状腺癌34例を対象とした.管状腺癌は16症例(47%)が腺腫内癌で,腺腫部分と腺癌部分を各々評価した.CD71発現はGrade 0:陽性細胞なし,Grade 1:腫瘍細胞の細胞膜のみ陽性,Grade 2:腫瘍細胞の細胞質の一部に弱陽性,Grade 3:細胞質のびまん性陽性が腫瘍組織の一部に認められるもの,Grade 4:細胞質のびまん性強陽性が腫瘍組織の全体に認められるものとした.χ二乗検定,Fisher直接確率計算で2群間の独立性を検定した.CD71発現は腺腫でGrade 0:12例,Grade 1:13例,Grade 2:2例,Grade 3:1例で,Grade 0-1が25例で大半を占め,Grade 4はなかった.腺癌はGrade 1:6例,Grade 2:6例,Grade 3:9例,Grade 4:13例で,びまん性陽性が最も多く,Grade 0はなかった.腺腫内癌では,16例全例で腺腫部分はCD71低発現(Grade 0, 1, 2)で,高発現はみられなかった.一方で腺癌部分は10例が高発現(Grade 3, 4)だった.CD71は管状腺腫で低発現,管状腺癌で高発現を示し,腫瘍生物学的に同一クローンに由来する腺腫内癌の腺腫部分と癌腫部分でも発現差を示した.CD71免疫組織化学は大腸腫瘍の病理組織診断で補助診断となり得ると考えられた.departmental bulletin pape
腰椎椎間板ヘルニアに対する椎間板内酵素注入療法における椎間板の水分含有量評価の有用性について ~MRI検査画像から求められるT2 mappingの有用性~
腰椎椎間板ヘルニアの治療法の一つに椎間板内酵素注入療法がある.椎間板内酵素注入療法とは,経皮的に椎間板内にコンドリアーゼを直接注入することにより,椎間板内圧を低下させ,ヘルニアによる神経根の圧迫を軽減させる治療法である.椎間板内酵素注入療法の治療効果判定は,磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Imaging:MRI)を用いた画像診断,症状緩和状態のみであり,治療による椎間板内の水分含有量の変化を定量的に評価することは現状行われていない.腰椎椎間板ヘルニアに対する椎間板内酵素注入療法において椎間板内の水分含有量の変化と治療効果の関連性について検討を行った.対象症例は,椎間板内酵素注入療法後にMRI検査を実施した患者32症例と腰椎椎間板ヘルニアを有し,未治療でMRI検査を実施した患者28症例の合計60症例,67椎間板を対象とした.腰椎椎間板内のT2値の測定は矢状断像を用いてL4/5,L5/S1椎間板の前方線維輪,前方線維輪移行部,髄核,後方線維輪移行部,後方線維輪の測定を行い,治療群と未治療群のT2値の比較を行った.また,治療群における治療前後でのJOAスコアの比較を行い,治療前後でのJOAスコア差と髄核のT2値との関係を求めた.また,JOAスコアの改善率におけるT2値のカットオフ値を算出した.治療群と未治療群の髄核のT2値を比較すると治療群で有意に髄核のT2値は低下していた.治療後のJOAスコアは治療前と比較してスコアが有意に高く,症状の改善が見られた.治療前後でのJOAスコア差と髄核のT2値との関係では負の相関が見られた.JOAスコアの改善率におけるT2値のカットオフ値はROC解析の結果,L4/5椎間板でAUC=0.782,カットオフ値54.6ms,感度72.7%,特異度80.0%,L5/S1椎間板ではAUC=0.893,カットオフ値56.8ms,感度85.7%,特異度100%であった.腰椎椎間板ヘルニアに対する椎間板内酵素注入療法において,椎間板内のT2値の変化は,治療効果判定の一助となることが示唆された.departmental bulletin pape
ハイパースペクトルイメージを使用した前立腺の腺癌と神経内分泌腫瘍の新たな識別方法の検討
前立腺neuroendocrine carcinoma:NECは稀であるが,通常の前立腺adenocarcinoma:ACとは,治療法や予後が異なるため適確な診断が必要となる.今回我々は,前立腺生検標本から,ハイパースペクトルカメラ(HSC)で撮影した癌細胞核内の141次元的なハイパースペクトルイメージ(HSI)と,ランダムフォレストを用いた解析からNECとACの識別について検討した.当院での前立腺生検1,239例のうち,免疫染色で神経内分泌分化を検索した15例を対象とした.これらをNEC 5例(A群),AC, neuroendocrine differentiation:NE(+), Gleason score:GS 8〜10(GS8-10(NE+)) 4例(B群),AC, NE(-), GS 8〜10, (GS8-10(NE-))を6例(C群)に分類した.また無作為に抽出したGleason score 6:GS6を8例(D群)として加えた.HSCで撮影した癌細胞組織から1症例あたり細胞核30個を選択し,細胞核毎の平均スペクトルデータを抽出しトレーニングデータとテストデータ(7:3)に分割した.トレーニングデータをランダムフォレストで学習した後,4群間(A群,B群,C群およびD群)におけるテストデータに対する正解率を算出した.テストデータに対する正解率は,4群間(A vs. B vs. C vs. D)で84%,AB vs. C vs. D, A vs. BC vs. Dでは,それぞれ89%,80%,B群のスペクトルデータはA群に近い傾向を認めた.HSIと人工知能を用いた解析は,前立腺におけるNECとACの識別に有用な可能性が示唆された.departmental bulletin pape
歯周組織再生
歯周組織は歯肉,セメント質,歯根膜,歯槽骨からなる.歯周治療は,病因であるプラーク細菌の除去を中心とした原因除去療法をベースとして発展してきたが,切除的アプローチのみでは長い上皮性付着による修復治癒となり,破壊された歯周組織の完全な再生は不可能である.歯周組織再生の達成には,高い増殖能の上皮組織を制御し,強固な線維性付着を獲得することが重要である.破壊された歯周組織を再生するため,Guided tissue regeneration(GTR)法,Enamel matrix derivative(EMD)や細胞増殖因子の利用,細胞移植治療などさまざまな再生療法の研究・開発が続けられてきた.骨移植は,古くから自家骨移植がゴールドスタンダードとされているが,採取量の制限や手術侵襲の拡大などの問題があり,最近では代用骨の使用が増えている.1982年に発表されたGTR法は,増殖の速い歯肉の上皮細胞と結合組織細胞が再生の場に侵入するのを防ぐ遮蔽膜を用いるというものである.物理的に細胞成分ごとの増殖や分化を制御するだけで良好な予後が得られたことから当初は世界中で広く行われたが,手術手技が煩雑であるなど,現在はほとんど行われていない.1990年代になると歯の発生メカニズムにヒントを得たEMDが歯周組織再生に応用されるようになった.EMDは幼若ブタの歯胚から抽出したエナメルタンパク質画分を主成分とし,フラップ手術時に歯根面に塗布する簡便性とGTR法と同等の効果が報告され,実施数が増加している.2000年代に入ると,細胞増殖因子の応用が始まり,最近では細胞移植治療の開発につながってきた.さらに,再生に不利な条件の症例ではこれらを併用する例も増えてきている.しかし,再生治療の実施にあたっては,科学的妥当性や倫理的配慮の他,医薬品や医療機器の安全基準に沿った適正な使用を遵守することが大変重要である.departmental bulletin pape
生後早期に硝子体出血が判明した胆道閉鎖症の一例
胆道閉鎖症は,胆汁うっ滞に伴いビタミンK欠乏性の病的出血を起こしやすいことが知られている.今回私たちは生後早期に硝子体出血を合併した胆道閉鎖症を経験した.症例は在胎37週3日,2,591gで出生した.出生後低血糖のためNICUへ入院し,易刺激性が強く凝固系検査を行ったところビタミンK欠乏性の凝固能障害を認めた.その後胆汁うっ滞が認められたが,全身状態は良好であり他に原因となる症状も認めないことからシトリン欠損症を疑い眼底検査を行ったところ硝子体出血を認めた.その後胆汁うっ滞が持続するため試験開腹による術中胆道造影検査を行ったところ,胆管の描出は得られず胆道閉鎖症と診断された.胆道閉鎖症に伴う病的出血は通常出生後に,ビタミンKが欠乏した場合に起こりうる.今回の症例は出生直後に認めた病的出血であり,胆道閉鎖症の契機となった胎児期の炎症に伴い凝固能が低下し,硝子体出血や網膜剥離を起こしたと推測された.そのため,胆道閉鎖症の児は胎児期の凝固異常を伴う可能性も考慮し,硝子体出血などの病的出血を確認することが重要と考えられた.departmental bulletin pape