Atomi University Repository / 跡見学園女子大学機関リポジトリ
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The Fixed Period を読む ―アンソニー・トロロープが描いた「1980年」―
application/pdftext『定められた期限』(The Fixed Period, 1882)は、アンソニー・トロロープの唯一の未来小説である。この小説はこれまで「トロロープらしくない作品」として、高く評価されなかったが、近年注目する批評家も出てきた。たとえば、物語に描かれている「安楽死」のテーマは今日の社会においても意義深い問題である。トロロープはこの小説を執筆した時65歳であった。安楽死のテーマを選んだ背景には、彼自身の健康に関する不安や、老いや死に対する意識があったと思われる。
トロロープは作家として常にチャレンジし続けた。この晩年の作品においてもこれまで殆ど採用しなかった一人称の語りを試みている。「定められた期限」の法を信奉し、高齢者の「強制的安楽死」を唱えるネヴァーベンドの語りは、彼の秘められた野心や傲慢さを露呈する。しかし、その一方でトロロープはこの頑迷な「改革者」の感情の揺れを鮮やかに描き、読者の反応を和らげている。
物語の舞台は「ブリタニュラ」というニュージーランドの近くの架空の島である。かつてはイギリスの支配下にあったが、30年前に国として独立を果たした。トロロープは、ネヴァーベンドが提唱する「定められた期限」を是認することはなかったが、それを阻止したイギリス側の「正義」に対しても無批判ではなかった。その根底にあるのは、母国イギリスの植民地支配や領土拡大に対するトロロープの疑念である。小説の後半では、巨大な軍艦に象徴されるイギリスの武力による介入や、ブリタニュラを「救出」して再統治するイギリス側の偽善が鋭く示唆されている。departmental bulletin pape
蜂須賀家旧蔵専修大学図書館蔵『和漢朗詠集』の漢字音
application/pdftext『和漢朗詠集』は藤原公任によって編まれた、11世紀における和歌と漢詩のアンソロジーとも呼ばれる資料である。『和漢朗詠集』は夥しい写本群が存することもあってか、日本語史の資料としては十分に整理されてきているとは言えず、また漢字音研究の資料としてはその価値は実証的にはほとんど確かめられていない。本稿では本資料の漢字音資料を分析し、その特徴を明らかにすることで『和漢朗詠集』を用いた漢字音研究の基礎を固めることを目的とする。
分析の結果、次の6 点が明らかとなった。(1)仮名音形から鎌倉時代初中期の特徴が見て取れる。そのことは奥書の記述と齟齬しない。ただし上帖(1251年加点)、下帖(1238年)のわずかな年代的な開きも部分的に確認できる。(2)声点は漢音に基づく五声体系(平声軽点は認められるが入声軽点は認めがたい)が主体であり、呉音も交える。声点については上下帖で大きな質的違いは見られない。(3)濁声点(双点)は次濁字に多く、これは漢音の特徴を反映している。全濁字にも比較的多いが、これは呉音の反映とみられる。(4)漢音と呉音に限らず、連濁例が観察される。ともに鼻音韻尾字に後接する場合に著しい。(5)『広韻』去声字・上声全濁字のうち1 拍のものは上声化傾向にある。(6)上昇調+上昇調(去声字+去声字等)、高平調+上昇調(上声字+去声字等)の組み合わせに現れる中低形は本資料ではほぼ回避されていない。回避例に見えるものも1 拍去声字の上声化を反映しているに過ぎない。
本資料の漢字音は鎌倉時代初中期の特徴を基本的には有しつつ、漢音、呉音の語による読み分けが資料内に存在していることから漢語としての発音が指向され、音調実現に日本語の拍数が影響を与えていはするが、日本語アクセント体系に融和しきるような1 語としての単位的結合までには及んでいない、と総括することができた。departmental bulletin pape
【論文】日本の山岳・高原リゾート地における疑似スイス風シャレー建築と英国風・チロル風ハーフティンバー様式
application/pdftext日本の山岳・高原リゾート地では、ハーフティンバー風の外装や山小屋(シャレー)風にデザインされた建物(ホテル、ペンション、別荘)が少なくない。戦前は、財閥などの有力者や登山家たちが欧風ハーフティンバーと山小屋建築に関心を寄せ始め、1930 年代にはスイスの山小屋風を意識したホテルが日本各地に登場した。しかしスイスやチロルにあるシャレー建築の精巧な模倣ではなく、日本の山間の伝統的な木骨造の意匠との類似・親和性から独自に生み出された疑似・折衷的なものだった。戦後は高度経済成長期に伴うレジャーブームと、札幌・長野での冬季オリンピック開催によって起こったスキーブームにより、山岳地を中心にシャレー風の宿泊施設が増加してゆくが、やがてハーフティンバー建築も高原リゾートらしさを演出するものと誤って解釈されるようになり、スイスやチロル風の山間の民家とイギリスの田園地帯の木骨造(ハーフティンバー)のコテージ風建築やチューダー様式との混同と共存が顕著になってくる。しかしバブル期の1980-90 年代に日本人が海外旅行を頻繁に行うようになり、本場スイスで本物のシャレーを見る機会が増え、現地のスイスシャレーにより忠実に似せようとした建物が、山岳・高原リゾート地に数多くできるようになった。departmental bulletin pape
テレワークにおける雑談によるパフォーマンスへの効果
application/pdftext本研究では,テレワークにおける雑談によるパフォーマンスへの効果の検討を目的とした。対象者は私立X女子大学学部3年生(実験群5名(M=20.20歳,SD=.447),統制群4名(M=21.00歳,SD=.000)),学部4年生(実験群7名(M=21.14歳,SD=.378),統制群3名(M=21.33歳,SD=.577))であった。実験はWEB会議システムZoomにて,実験群(①pre質問紙,②雑談(20分間),③単純計算課題:百マス計算(7分),④グループディスカッション(20分間),⑤post質問紙),統制群(実験群手続きから②を除いたもの)を実施した。Pre・post質問紙はポジティブ感情尺度(伊藤・宮崎,2012),「快適さ」,「健全な闘争」,「共感」,「素朴な安らぎ」でありSD法による7段階評定を行った。
3要因の分散分析(混合計画)を行った結果,3年生の実験群は,実験後に思いやりのある,感じの良い方に高くなることが明らかとなった。以上のことから4年生と比較し,密接な関係性がない集団に雑談の効果が見られた。雑談において自分の話をすることや,人の話を聴くことで他者へ心を配る気持ちが高まる,そして雑談をするだけでも気持ちが良くなることが示唆された。departmental bulletin pape
〈成熟〉という困難なミッション ―佐藤史生『死せる王女のための孔雀舞』における「成熟と喪失」について―
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MLA 連携〔論〕を素地とする建学者アーカイブの構築の意義と展望 -『跡見花蹊日記』のフルテキスト・データベースの構築とユニーク語彙の出現に係る検証の試みを中心に
application/pdftext「跡見花蹊アーカイブにおけるMLA 連携を内包するシステム構築のための予備的研究(ⅰ)―MLA 連携から見る花蹊日記における花蹊ユニーク語彙の出現にかかわる実事例検証の試み」を研究題目とする令和3年度大学特別研究助成を得て、『跡見花蹊日記』のフルテキスト・データベースを試行的に構築して、特に人名・事項・作品の3観点から検索することによって、花蹊ユニーク語彙の出現についてその傾向を検証し、今後の大学アーカイブの形成と大学組織内に潜在的に構築の可能性のある学内MLA 連携について、その課題と展望を明示することを試みた。
あわせて「アーティストは一面優れてアーキビストである」ということの実証を跡見花蹊の創作の記録である「揮毫雑記」に見出し、より精密な作品創造に係る記録を日記に重ねて、MLA 連携の要となることを指摘する。departmental bulletin pape
学校でのトラブル場面における第三者的立場の子どもたちによる教師への援助要請
application/pdftext本研究では,日常のトラブル場面における第三者的立場の子どもたちの教師への援助要請に関する行動実行の利益とコストの予期に影響を及ぼす要因について,学級風土に着目し,小学生を対象に質問紙調査を行った。大きくは以下の2つの示唆が得られた。(1)学級風土の全体的な良好さが,教師への援助要請に関する行動の実行の利益とコストの予期にポジティブな影響を及ぼす可能性が示唆された。(2)学級風土の各因子が与える影響では,次のような可能性が示唆された。①全体的・②5年生:「規律正しさ」が教師への援助要請利益の予期促進の可能性と,教師のネガティブな反応への予期を抑制することに繋がる可能性。「自然な自己開示」が自助努力への予期抑制につながる可能性。③6年生:「規律正しさ」が教師への援助要請利益の予期促進の可能性,教師のネガティブな反応への予期抑制の可能性。④男性:「自然な自己開示」が援助要請をして問題が解決されることへの予期促進の可能性,秘密が守られないことへの予期抑制の可能性,自分で解決しようとすることの予期抑制の可能性。また,「規律正しさ」が教師のネガティブな反応への予期抑制につながる可能性。⑤女性においては「学習への志向性」が教師への援助要請の利益促進に,「学級への満足度」がネガティブな反応の予期抑制や秘密が守られないことへの予期抑制につながる可能性。
教員の場合は,自己のクラスの風土を意識し,日々の学級活動を通して,学級風土をより良好な方向へと促していくことが,第三者的立場の児童の援助要請を促進させることに繋がるのではなかろうか。スクールカウンセラーの場合は,学級風土をアセスメントし,教諭へのコンサルテーションを通して,学級風土にアプローチしていくことで,子どもたちの援助要請を促すことに繋がることが考えられるではなかろうか。departmental bulletin pape